今日も、喧嘩を売られた。
「んっ、ふ」
 とはいえ、ただ買い取ったんじゃ、正当防衛を主張できなくなってしまう。仕方なく、一発食らってから、相手を蹴散らしていた。だらだらと相手をいたぶるのは趣味じゃない。それに、長時間暴れるとなると、野次馬も集まってくる。追いかけて来られない程度にやり返して、相手が呻いている間にその場を後にする。
 気付くと、そんな立ち回りに慣れてしまっていた。
「ンぐ、ぅ、ぢゅぅ……、っは」
 カタギになりはしたけれど、喧嘩は好きだ。人がわあわあ沸き立っているのを見るのも楽しいし、自分が暴れるのだって嫌いじゃない。単に、体を動かすことが好きなせいもあるのだろう。だから、二、三日に一回、喧嘩を売られる生活も、まあ悪くないと思っている。
 多少は、ストレスの発散にもなるし。
 あくまで、多少は、だ。絡んでくる連中のほとんどは雑魚。骨がなさすぎるのだ。一人投げ飛ばして終わるのであれば、熱を燻ぶらせずに済むのだが、数人相手になるとテンションが上がってきたところで終わってしまう。半端に昂った体は、いつだって飢えのような物足りなさを訴えてきた。発散しそびれた熱は、フラストレーションに置き換わる。
 さて、今日のこの不満は、どうしてくれよう。
「んっ、んんン」
 当然のように、足はこのアトリエに向いていた。
 夜な夜な顔を出している、三ツ谷の、城。来たばかりの頃はもっとがらんとしていたが、家具もいくらか増えてきた。ソファにローテーブルだろ、収納を兼ねたスツールが二つに、布を置くための棚は三つになっている。それでも置ききれないものが積み重なっていて、もう一つ増やすか、とこの間ぼやいていた。
 そのぼやきを聞いたのも、オレの高揚に付き合わせたあとだったな。
「ん、みつや、そこ」
「ぅん? んふ、ふふ……、むヂュ、ゥ」
「あー、そお。そう、上手」
「ふふふ」
 染め直したばかりという髪を撫でると、この間よりも柔らかな手触りをしていた。床屋や美容院ではなくセルフでしているのに、手入れが行き届いている。指に絡むそれは、滑らかで気持ち良かった。
 堪能しているうちに、ぢゅぱ、なんて水音を立てて三ツ谷が一度顔を離す。はあっと吐かれた息は、上気して過分な程の色気を孕んでいた。呼吸を整えつつも、反り返ったブツに三ツ谷は頬を寄せてくる。何もしなくても垂れている目尻は、うっとりと蕩けだしていた。
「あご、いたい」
「フェラしたいって言い出したの、オマエじゃん」
「だって、ドラケン、イくまでが長いんだよ。こっちは二回も三回も出してんのに、ずっとバキバキだし」
「はは、ありがと」
「褒めてねえ、この遅漏!」
「三ツ谷が早漏なだけじゃね?」
「はあ? 前立腺のヤバさ、ドラケンにも教えてやろうか」
「……とろとろになったオレ、見たい?」
「……オレのケツに嵌めてトロトロになってる顔は、結構可愛いよ」
「うわ、知りたくなかったワ、その情報」
 くしゃりと頭を撫でると、三ツ谷の息も落ち着いたらしい。軽口を挟みながらも、ちゅ、むちゅ、と竿に唇を当て始める。
 小さく出した舌で、浮き出た血管をなぞられた。根元の方からゆっくりと上っていき、カリを柔く食まれる。何度か唇で挟んだあと、三ツ谷はぱかりと口を開けた。それまで、わずかにしか見えなかった舌が、べろりと伸びる。
「んッ、ク」
「ぁムッ、ふふ、んん」
 唾液を纏った舌先が、裏筋に触れた。そこを固定したまま、大きく開いたクチがぱくんと亀頭を咥え込む。じっとりと湿っているナカは、酷く熱い。先っぽに添えられていた舌は、口内に沈むうちに茎の方へ絡んだ。
 上機嫌に目を細めながら、三ツ谷は頬の片方を膨らませてみせる。この内側に擦れてんだよ。そう、教えられているかのよう。粘膜が柔い肉に擦れるのは、確かに気持ちが良かった。
「ぁー……」
 先っぽは口内で愛撫されて、入りきらない分は手が添えられる。指の一本はふにふにと睾丸にも伸びていた。
 オレを責め立てる顔には、まだ、余裕が乗っている。頬も目元も赤らんではいるから、興奮はしているのだろう。けれど、とろんと歪んでいる瞳は、まだ得意げ。オレよりちょっとだけ体力ないし、イキやすいのも事実。この程度の余裕、ハンデとしてくれてやるべきなのだろう。……わかっていても、癪。
 きゅ、触り心地の良い髪を、軽く握った。
「……んん~?」
 股座にある三ツ谷が、上目遣いでオレを見上げる。合わせて、頬の内側から先っぽが離れた。かといって、三ツ谷の口から吐き出されたわけじゃない。ぬと、とエラこそ唇から溢れはするが、充血した頭はまだ口のナカ。見えないその内側で、舌先がチロチロと鈴口を擽った。
「ぅク、ふぅ……」
「ンふ、ふ」
 あ、こいつ、煽ってる。
 小ぶりな唇はまあるく開いているが、それにしては頬が上を向いていた。口紅を塗っていたら、口角が持ち上がっているのもはっきりわかったかもしれない。涼し気なこの顔に赤いリップを引いたら映えそうだ。そんな綺麗なお顔が、喘ぎでヨレていくの、堪んねえだろうなあ。
 ぞくり、じわり、背骨に不埒な欲が纏わりつく。中途半端に暴れたのもあって、腹の中には満たし損ねた征服欲も渦巻いていた。全部まとめて、この男にぶつけられたら、どれほど清々しくなれるだろう。でも、三ツ谷を傷つけたいわけじゃない。んん、けど、煽ってくるくらいだし、ちょっとくらいの無体、許してくれるかな。
 じっとりと見下ろす先で、三ツ谷が、きゅうと目を細めた。
「ろあけん」
「ッあ?」
「……ひよんらよ?」
「なに、いってン」
 だ。言うはずだった最後の音が、喉に詰まる。
 ヌぷん、カリ首が、埋まった。つるんとした先っぽが、上顎のざらりとしたところに擦れる。身構えていなかった刺激に、下腹が震えた。ぴくぴくっと三ツ谷も体を震わせたから、何らかの快感は覚えたらしい。
「ク、ぅ……?」
「ん、ん゛ッ」
 てっきり、そこで止まるものだと思っていた。その深さで、じゅぷじゅぷと啜ってくれるのだろう。そう、思っていた。
 しかし、三ツ谷は、まだ顔を埋めている。こく、こくん、喉を動かしながら、より深く、その熱を咥え込んでいった。
 亀頭が、上顎の骨を過ぎ、柔らかいばかりの粘膜に触れる。もはや、喉にまで達しているのでは。苦しくない、はずがない。にもかかわらず、三ツ谷は上機嫌を纏ったままだった。苦しさを微塵も感じさせず、それどころか恍惚としてすらいる。
「ハッ」
「ン……、ヴ、んッ、」
 ぎゅ、う。手が、力んだ。髪を、より強く握りしめてしまう。それでも三ツ谷は嫌な顔一つしなかった。いいよ、大丈夫、平気だから。うっとりとした瞳で語り掛けられる。ついでに、きゅ、ぎゅう、口内の媚肉が肉棒に絡みついた。
「んの、クソッ、あ、ぅ」
「ふ、んふふ、ン゛」
 口はオレのモノで塞いでいる。おかげで、笑い声が鼻から抜けていった。入り切っていない幹に、さわりとその吐息がかかる。咥え込まれた部分に比べたら、その刺激はあまりにも細やか。……けれど、オレの欲はガリガリと掻き毟られてしまう。
 腰を、振りたい。三ツ谷の負担とか無視して、喉奥まで穿ってしまいたい。直接腹の中に射精できたら、さぞ気持ち良かろう。いや、このどこか余裕そうな顔にぶっかける方が、したいかも。
 ああ、くそ、この淫蕩面に、乱暴したくて仕方がない。
 ガ、と、形のいい頭を、雑に掴んだ。
「ンふ」
 途端、三ツ谷の瞳が弓なりに歪む。
 ―― 一際キツく、怒張に吸い付かれた。
「ぅ」
 内側の肉が、これでもかと絡みつく。きゅうきゅうと蠢くソレは、精を搾り取る意図しかない。再び下腹を力ませてみるものの、せり上がってきたソレらは、戻れるところにはもういなかった。
 体の中心を、熱が走る。
「~~ック」
「ん゛ッ……! ん、んん、ぅ」
 どくんと、熱塊が脈打った。何度かに分けて口内に吐き出していると、それに合わせて三ツ谷は喉を上下させる。悩まし気に眉を寄せているが、噎せる様子は全くない。管に残った一滴すらも惜しいと、啜ってくるほど。
 漲っていた自身がくたりとしてきて、ようやく三ツ谷は顔を退いた。窄めるようにして口を離したのもあって、ぢゅぽっと品のない水音が立つ。たっぷりと塗された唾液が、しばし三ツ谷の唇とオレのソレとを繋いだ。わずかに粘度のある糸が、もったいぶりながらプツンと切れる。
 濡れた唇が、にんまりと弧を描いた。
「いっぱい出たね」
「……そのわりに簡単に飲んでたじゃん」
「いやあ、ドラケンのイキ顔見てたら綺麗に飲めちゃった、ホラ」
「あーあーあー口ン中見せなくて良い」
「ほお?」
 ぱか、と開けて見せられたナカに、白濁は残っていない。あるのは熟れた赤い粘膜と、並びの良い歯列だけ。
 生意気に見せつけてくる舌を、ぎゅうと抓んでやりたい。……今、口内に指を捻じ込んだら、恍惚としたまましゃぶられそう。そうなったとき、煽られるのはこちらの理性。その先に待っているのは、技巧も何もなしにがつがつと腰を振りたくる自分。だめだろ。コイツの前で、そんな醜態晒したくない。三ツ谷もトロトロのメロメロになっていたら別だけど、この調子じゃあ余裕を携えたままだろう。
 どうにかして、三ツ谷から優位を奪い取らないと。
 セックスに、勝ち負けはない。わかってはいるが、オレだけ蕩けさせられたんじゃ、喧嘩で得た高揚を昇華できない。
 息を整えようと、静かに空気を取り込んだ。
「はあ……、萎えててもこうだもんなあ」
「ぅ、おい」
「んっ、ちゅ」
「ン」
「ふ、ふふっ、どくどくしてきたね」
「……嬉しいだろ。オマエ、オレのちんぽ大好きだもんな」
「ええ? んん、まあ、ウン。好きだよ。絶倫じゃなきゃもっと好き」
「絶倫だから好きの間違いじゃね?」
「だからいつも言ってんじゃん、ドラケンが一回イくまでにオレは三回イッちゃうって」
 あれ、ほんとしんどいんだからな。ぶつぶつと愚痴ってくるが、三ツ谷は満更でもない顔をしている。やっぱり、絶倫だから好きで間違ってねえじゃん。
 さらりと頭を撫でると、再び熱を持ち出した陰茎に口付けられる。ちゅ、むちゅ。唇に唾液が乗っているのもあって、啄むだけでも濡れた音がする。切っ先から始まったキスは、竿の腹、根元へと移動していった。あっという間に硬度を取り戻した自身は、ギンッと天井を向く。赤黒い亀頭からは、じんわりと我慢汁が滲みだした。
「おっきい……」
 うっとりとした声が、付け根にかかる。見下ろしていると、三ツ谷の右手が伸びてきた。その指先は、つんと根元に触れてから、下にある曲線を撫でる。なぜか、三ツ谷の口元は緩んでいた。垂れた二つを交互に指で持ち上げては、濡れた吐息で笑う。
「……なあ」
「んん?」
 声を掛けると、三ツ谷は舌を伸ばしながらオレを見上げた。ツン、舌先が、睾丸に触れる。ちろちろと、一点を擽りだした。
「オマエ、フェラしたあと絶対金玉舐めるよな」
「……そお?」
「おー。自覚ない?」
「や、あー……」
 口ごもりながら、三ツ谷は視線を泳がせる。そのくせ丸みに唇は寄せたまま。手慰みかのように舌を添えている。ふに、り。同様にソコにある人差し指が、袋の片方を持ち上げた。
「ここに、ね」
 小さく、三ツ谷が口を動かす。必然的に、声の振動が睾丸に伝った。もどかしい刺激で、腰が揺れそうになる。ぐっと堪えると代わりと言わんばかりに切っ先に透明な液体が滲んだ。
―― ホクロ、あるんだ」
 竿の、向こうで、三ツ谷がいたずらな笑みを浮かべる。
「……は?」
 言われた意味を飲み込めず、ぼろっと間抜けな声を落とした。その音を発した形で、口は固まる。自分のぽかんとした顔が、三ツ谷の瞳に映り込んだ。
「うんとね、ココ」
 呆けているオレをよそに、三ツ谷はまた舌を伸ばす。唇から見えるように突き出して、睾丸の、先程も舌を這わせていたところを突いた。ぬるつく粘膜が、ふに、当たる。わずかに、沈む。決して長くはない舌が、くにくにと一点を舐りだした。
「……マジ?」
「あはは、ホクロってこんなとこにもできんだね」
「まあ、皮膚、だし」
「うん。でもなんか、ふふ、エロいよなあって思って、つい」
 可笑しそうに破顔した三ツ谷は、舌を退きつつチュッと同じ場所に口付けた。それから、するすると反り返った幹に移動し始める。何の躊躇いもなく、反り返った陰茎に頬ずりをした。滑らかな肌が、脈打つ熱にぴったりと触れている。
 日中の爽やかさはどこへやら。むしろ、この淫靡な雰囲気をどこに隠していたんだろう。そういえば、初めて迫った時も、エロかったな。アナルを暴いた日も、最高に感度が良かった。性的なコトには興味なさそうな面してるのに、その実、享楽に素直。こっちがやらかしたと頭を抱えても、「気持ち良かったから良いよ」とうっとりする始末。
「……あー、」
 ぐつぐつと、情欲が、煮える。一度達したものの、既に完勃ち。血が巡るたびに、焦燥感に似た苛立ちが脳を満たしていく。
「ホクロ、ねえ……」
 ぼそりと呟きながら、三ツ谷の両脇に手を差し入れた。胸部を掴むようにして、力を込める。オレのしようとすることに気付いたのだろう、持ち上げる動きに合わせて三ツ谷は腰を浮かせた。ソファの上に引き上げながら、その体を押し倒す。スエット生地に覆われた中心には、ぱつんとテントが張っていた。なんなら、グレーの布地に染みが出来ている。三ツ谷のカウパーの量を思えば、こうもなるだろう。
「オマエにも、あるよ」
「うん? なにが」
「ホクロ。三ツ谷にも、あんだよ。―― エッロい、ホクロが」
 声を潜めて言えば、ぱちぱちと三ツ谷の目が瞬く。
「うそ、オレのチンコにホクロなんかあった?」
「ああいや、チンコじゃなくって」
 そっと三ツ谷の両膝に手を掛ける。胸の方へと持ち上げると、自らかぱりと股を開いた。布地が突っ張って、膨れた陰茎やせり上がった袋の形がうっすらと見える。スエットの縫い目は、きっと尻の割れ目に沿うように食い込んでいるのだろう。引ん剥いたら、縦に割れつつある後孔が物欲しげに震えているに違いない。
 くそ、マジでチンコ、イライラしてきた。
「ここ」
 向けられた股座に、とすり、指を立てる。会陰の、中央よりちょっと左側。布越しではあるが、ココだと断言できる。それくらい、エロいなと思って日頃見下ろしてきた。突き立てた指の腹を、ほじるように押し当てる。ひく、と、三ツ谷の膝が震えた。続けて、もどかしそうに腰が揺れ始める。
「え、と」
「ここに、あんの。ホクロ」
「……マジで?」
「マジ。あと」
「あとって、他にもあんのかよ!?」
「ある」
 名残惜しくも指を離し、改めて三ツ谷の膝を掴んだ。ぐ、ぐ、と頭の方へ、押していく。
 ……ようやく、三ツ谷の顔に焦りが浮かんだ。ずっと佇んでいた余裕が、すっと失せる。まあ、この慌て方は、腰痛を危惧してのものだろうけれど。まぐわった後には必ず腰を揉んでやっているが、いつまで経っても柔らかくはならない。座り仕事って、大変なんだな。コイツの場合、中腰で作業することも多いみたいだし。
「う、わ……、うわうわうわッ!」
 尻が天井を向く頃には、三ツ谷の両膝は頭の真横に辿り着いていた。腰どころか、背中の真ん中あたりまで浮いている。覗き込んだ顔は、見事なまでに強張っていた。ぴくぴく引き攣る頬は、姿勢の辛さを切実に訴えかけてくる。
「ど、らけん、」
「ん」
「この、姿勢、だめ、セッ、背中! 攣る!」
「うん」
「うんじゃねえ! ッぁ、え゛ッ!?」
 喚く声を聞き流して、臀部がソファに戻らないよう体を潜りこませる。脚を押さえていた手も滑らせ、伸縮性のある布地ごと尻たぶを掴んだ。柔らかな布の下に、むっちりとした肉の感触がする。脂肪の弾力感は薄く、かといって筋肉質でもない。ただ、凝っているのは確かで、ココも事後に揉みしだくと良い反応を返してくれる。ちなみに、ヤッている最中も、揉むとよく喘ぐ。良い尻してる。
 ぐに、と、左右に割り開く。と、長い嘆息が聞こえた。その息が、湿り気を帯びているのは気のせいではあるまい。
 膝や足首は、ぴくっ、ぴくんっと健気に震えている。攣る、攣る。ツとルを何度も繰り返しているが、尻を触られてちょっと興奮してきていると見た。本当に、良い尻だと思うよ、オマエのココ。
 内心でほくそえみながら、片方の親指を縁スレスレ、際どい所に沈めた。
「ぁッ、え、えッ」
「ココにもある」
「へ」
「尻穴の、すぐ横」
「ま、まさか」
「ウソだと思う? 写真にでも撮ってやろうか」
「ッいらねえよ!」
「遠慮すんなって」
「してなッ……、おい引っ張ン、~~ッぁ」
 両手は尻の上にある。そこから、スエットのゴムに指を伸ばすのは、そう苦労しなかった。三ツ谷の下半身を浮かせたまま、下着ごとウエストを引っ掴む。ベルトがないと、楽でいい。
 強引に引き剥がすと、ふるんっと膨れたペニスが飛び出した。顔を出す瞬間、下着が擦れたのか雫が散る。残念ながら、その液体は白く濁っていなかった。でも、達するのも近そうだ。真っ赤に熟れた先っぽはぐっしょりとしているし、縦に割れつつある後孔は疼きを露わにヒクついていた。……震えるたびに、愛液を思わせる艶が滲み出る。とろみのあるソレは、教えたばかりの小さなホクロのことも濡らしていた。
「えっろ。もう準備してあんじゃん」
「……だって、ドラケンが来るって、電話してくるから」
「は? あのあと十分くらいで着いたろ」
「十分もあればまあ、ゼリー仕込むくらい……」
「……えろ」
「ンだよ、即ハメできるケツマンコ、好きだろ」
「好き」
「このスケベ」
「三ツ谷ほどじゃねえよ」
「どこがだ、ドスケベ!」
 ひとしきり軽口の応酬をしたところで、ふ、三ツ谷が息を詰める。いい加減、この姿勢から解放してやるか。勢いよく落っこちないように、太ももに手を添える。
 と、三ツ谷の両手が、伸びてきた。バランスをとるのが難しいようで、くらり、ぐらり、浮いた下肢が揺れる。咄嗟に、三ツ谷を支える手に力を込めた。
 安定したのを良いことに、布を巧みに操る指が、自らの尻に沈む。食い込む。む、ヂッ、なんて、効果音が聞こえて来そう。
「ね、きて……?」
 熟した穴が、くぱぁっと割り開かれる。
 引き寄せられるまま、己の熱を、押し当てた。たったそれだけで、肉壁が物欲しげに吸い付いてくる。このぬかるみに浸かったら、天国を見られそう。ほとんど真上から、怒張を埋めていく。ああ、熱い。滑る。でも、絞まる。脳みそに直接叩きつけられているかのような悦に、理性がトびそうになる。いっそ手放して、強引に捻じ込んでしまおうか。折角即ハメできるよう、準備してくれたことだし。
 窮屈だったにもかかわらず、直腸はあっという間にオレのナニを半分ほど飲み込んだ。根元まで、もう半分のところまできている。
 今日は全部入るだろうか。初めの頃は、ぱっくりとすべて飲み込んでくれていたが、近頃は全部埋めると「痛い」と叫ばれてしまう。あと、「怖い」とも。後者は、右も左もわからないくらいの悦に轟沈している最中に言われた。あの三ツ谷が言う「怖い」だぞ、よっぽどだろ。多少の痛みは快感として捉えてくれる体をしているけれど、「怖い」の前じゃたたらを踏まざるを得ない。さすがの自分も、「耐えろ」と強要することはできなかった。
 だから、今日も、全部は入れられない。三ツ谷が怖がる手前まで。一線を超えてしまわぬよう、生々しい肉をかき分けていく。
「は、あ……、ぁ?」
 熱い。滑る。でも、絞まる。
 それはその通りなのだが、与えられる感触のどれもこれもが生々しい。普段より鮮明というか、直接的というか。いつもある、一枚の壁がないと、いうか。
「ゲ」
 ないワ。間違いなくない。つけて、ない。
「ぁ、あンッ、ぅ」
「……いや、まて、待て待て」
「ぇ、あ、なに」
「ゴム、してない」
 コンドームを、つけていなかった。
 ぴたりと埋める動きを止めると、熱に屈し始めた視線がオレの方に届く。ごむ。唇の動きだけで、三ツ谷はその単語を呟いた。
 それから、とろとろと視線が移っていく。おそらく、結合部に向いたのだろう。繋がっている縁は無理でも、埋まり切っていない竿は、見えるはず。
 赤黒い肉が剥き出しなのに気付いたのか、キュンッとナカが震えた。
「ナマ、じゃん」
「ごめん。今抜くから、」
「あ、ァー、うん」
 こくんと頷きつつ、三ツ谷の足が、オレの腰に回った。キツい体勢だろうに、思いのほかしっかりと絡みつく。
 なあ、今、オレ、抜くって言ったよな。
 それとも、このままシたいと口を滑らせていたのか?
 まさか。生ですることに興味がないわけではない。が、何が何でも生ハメしたいというわけでもない。そんな自分が、口を滑らせるとは思えなかった。
 一つ、深呼吸してから、改めて三ツ谷の体を見下ろす。上を向いた後孔には、オレの陰茎が何の膜にも包まれずに突き刺さっていた。入れ込んでいく間に背中はソファに戻ったが、腰は浮いたまま。両脚は胸の方に折りたたまれてはおらず、やはりがっしりとオレの腰を捉えていた。なんとかして引き抜こうと思っても、絡んだ脚に動きを阻まれてしまう。
「だから、一旦、抜きたいんだけど」
「ウン」
「ウンじゃなくて」
「ぁの、ドラケン」
「……なに」
「こ、このまま、シない?」
「は」
 こて、と、三ツ谷の首が傾いた。額には雫のような汗が浮かんでいる。肘掛けに預けている頭も、じっとりと汗ばんでいるのだろう。火照りを示すように、目元や、頬、耳、首筋なんかも赤みを帯びている。裾が捲れて見えた腹筋は、小刻みに打ち震えていた。その上では、三ツ谷の膨れた陰茎が、だらしなく涎を垂れ流している。ほんと、カウパー多いな、コイツ。実は潮と言われても、納得できてしまいそう。
 込み上げてきた欲のまま腹についている竿を握ると、それだけで三ツ谷はぴゅるっと薄い精を吐き出した。頻繁にしているのもあって、近頃の三ツ谷の精液はさらりとしている。かろうじて芯を残しつつもくたっとした肉棒を揉めば、オレを包んだハラワタが強請るようにうねった。一枚の隔たりがないせいか、肉の蠢きを如実に感じる。
 なんというか、そう。
「ぁ、その、んんっなんか、―― 生々しくって、」
 抱いた感想とすっかり同じ言葉が、三ツ谷から零れた。
「いつもより、きも、ちい……」
 続けて告げられたそれにも、共感を覚えてしまう。
「……スケベなのはお互いさまってか」
「ンッ、ぁ、なに?」
「なんでも!」
「あっ、」
 素早く息を吸い込み、三ツ谷の腰を掴み直す。共に暴れ回っていた頃に比べたら、柔らかさのついてしまったソコ。指摘すれば、真顔で「筋トレする」と言い出すことだろう。鍛えると、締まりも良くなるんだっけ。それは困るな、今の時点で三ツ谷のアナルはキツキツ。これ以上の締め付けを覚えられたら、自慢のコイツを食いちぎられかねない。
 どうせ食いちぎられるなら、加減などせずに熱の全てをぶち込んでしまおうか。いや、いくら三ツ谷でも、これを捻じ込んだら、痛いと叫んでしまうに違いない。
 ……が、それは、それとして、今の淫奔な三ツ谷なら、ばっくりと咥え込んでくれそう。ナマの熱感に溺れているし、上手いコト誤魔化せる気がする。
 ぎゅ、ヂぷ、狭苦しい肉壺を、猛った自身で割り開いていく。
「あ゛ッ、ア!」
 すぐに、ミチッと壁に突き当たる。でも、全くのゆとりがないわけではない。普段は控えめに窄まっている入口だって、オレのを咥えるまで開くのだ。もうちょっとくらい、いけるだろ。たぶん。
 押し伸ばすように、圧をかけていく。真に剥き出しの亀頭が、締まりの良い奥に食い込んだ。
「ク、」
「~~ッ!」
 がくんと三ツ谷の体が強張る。それと同時に、最奥に埋まった自身にキツく吸い付かれた。咄嗟に腰が退けそうになるが、がっちりと三ツ谷の脚が回っているため、肉棒はめり込んだまま。切っ先からカリ首、茎に浮いた血管にまで、余すことなく媚肉が絡みついてくる。
 イキ、そう。でも、生だ。ナカに出すのはまずい。ぐずぐずに蕩けた淫孔に注いでしまいたいところだけれど、一抹の理性がそれを引き留める。歯を食いしばりながら、必死に腹を力ませた。襲い掛かってきた射精感が、出口を失って蜷局を巻く。それすらも押し殺そうとすれば、つられて三ツ谷の腰を掴む手に力が籠っていた。みっちりと、指が、薄い肉に沈む。食い込む。
 痕、つきそうだな。
 焼き切れそうな頭が、ぼんやりとそれを捉えた。うらりと視線を動かすと、へその辺りに新たな白濁が散っている。あんなにイキたくないと言っていたくせに、またイッてしまったらしい。ナマを媚びて、次々と射精させられるってどういう心境なんだろうな。……案外、なにも考えていないのかもしれない。なんせこいつは、快楽に大変弱いカラダをしているので。
「っぷは、ぁ、あ゛~」
 止めていた息を再開するも、まだ、三ツ谷の体は固まっている。口からベロがはみ出ているし、黒目はひっくり返りそうになっていた。おかげでナカはきゅうきゅうに狭いまま。
「ぁっ、ア、ォ……」
「み、つや? おい、まだトぶなよ」
「トんで、りゃ、ぃっ、アっ」
 震える腕をどうにか伸ばして、だらしなく緩んだ頬に触れた。二回、三回と微弱に叩いてやれば、虚ろだった焦点がどうにか戻ってくる。一つ瞬きをすると、生理的に溢れたと思われる涙がぼったりと落ちた。ついでに、鼻水もちょっとだけ垂れている。口元はもう涎塗れ。涼やかとは、対極の顔つきに成っていた。
「これ、」
「うん」
「すき、」
「……すき?」
「すきっ、すごい、ぁ、すきッ、」
 拙い舌遣いで、三ツ谷はひっきりなしに「好き」と喘ぎ始める。甘ったるい声が、ねっとりと鼓膜に張り付いた。湿った猫なで声は、素面であったなら不快にも聞こえたろう。しかし、今の自分には興奮を煽る材料になる。昂った神経にじんっと効いて、殺したはずの絶頂感が迫ってくる。
「もっとぉ……!」
 ―― もう、ナカにぶちまけちまってもいいかなあ。
 舌なめずりをしてから、欲にまかせて律動を始めた。