五
ば、と体を起こした。跳ねるように飛び起きたせいか、心臓はドクドクと脈打っている。嫌な夢を見たあとのように、背中がぐっしょりと冷たかった。
「……」
目をカッと開いて、室内を見渡す。仄暗い中に、ぱたぱたとカーテンが揺れていた。窓の外も薄暗い。だが、月が出ているようで、室内よりも明るく見えた。
すん、と、鼻を鳴らしたところで、もう甘い匂いはしない。代わりに、ゾッとするほどの青臭さが残っていた。
「…………」
手をついたベッドは異様に湿っている。開いていた目を極限まで細めて、自分の周りに目を落とせば、早速使用済みコンドームが視界に入った。しかも口を縛っていない。どろりと、中身を零している。それが、一つ、二つ、……床に落ちているのも含めると、合わせて五つ。縛ってゴミ箱に放り投げた記憶もあるから、さらに回数はこなしているのだろう。
自分の失態は、全て、余すことなく、覚えている。
「クッソ、最悪だ……」
「そこは最高だったって言えよ」
「うお」
頭を抱えた瞬間に、少し低いところから掠れた声がする。抑えたばかりの額を向ければ、案の定、三ツ谷がくったりと寝そべっていた。タオルケットを被ってこそいるものの、上半身のほとんどは曝け出されている。薄暗いながらに、歯型や鬱血痕が目についた。どれもこれも、オレがつけたもの。あまりの生々しさに、目を覆いたくなってくる。
「起、きてた、のか」
「起きれねえけどな」
「……悪い」
「まあ責任取れって言われたし?」
「……すまん」
「んはは、殊勝なドラケンとかまじ笑えるね」
あれほどの行為に耽ったというのに、三ツ谷は緩んだ顔をしている。恍惚さが滲んでいるともいう。もしかすると、まだ余韻に浸っているのかもしれない。そりゃそうだ、ぶちまけた体液はどれも乾いていない。自分が意識を飛ばしていたのだって、おそらく数十分だ。
あのあと、意識を飛ばしたのは確か二回。最初に、オレが落ちて戻ってきたときは、全身を真っ赤にした三ツ谷が騎乗位で腰を振っていた。よくもまあ頭の血管が切れなかったと思う。で、次が今。先に三ツ谷がトんだとちゃんと見届けてから、意識を手放した。またコイツに跨られていたら、死ぬのは自分。そう思ってしまって、かなり激しくした覚えがある。アルファが優位に立つ内容のAVは数多あるが、現実はそうでもない。実際は、アルファよりオメガの性欲のほうが強いのだ。おかげで、搾り取られすぎて不能になるアルファもいるくらい。そうならなくて、良かった。心底思う。
ぐるぐると考え込んでいると、熱に溺れた三ツ谷の姿が蘇ってくる。恥じらいなんて、なかった。憎いほどの鈍さはどこへやら。気持ち良い・もっと・好き。浴びせられた言葉のレパートリーはそれだけなのに、妙に情欲が焚きつけられた。黙り込むと、耳元で甘ったるい幻聴が響く。頭が痛くなってきた。
「あーあ、やっちまったなあ……」
改めて額を押さえると、ぽつりと三ツ谷が零す。手の位置はそのままに三ツ谷を横目で見ると、ソイツの視線は窓に向いている。風を受けて揺れるカーテンを、眺めている。つられるようにして、オレもカーテンを見やった。窓を開けていなかったら、まだあの甘さが籠っていたのだろうか。そう思うと、背筋が冷える。あの匂いがしていたら、オレもこいつもどうなっていただろう。
「窓、全開だぜ? 絶対、隣に喘ぎ声聞こえたよな」
「あ」
どうもこうもねえワ。結局、最悪じゃねえか。
バッと弾けるように三ツ谷を見ると、相変わらず蕩けた顔をしていた。マズいよなあ、引っ越したほう良いかなあ、と言っているくせに、どこかうっとりとしている。聞かれたことにすら、感じ入っているみたいだ。
あの音は、傍から聞くとどう思われたろう。レイプと思われていなきゃ良いのだが。なんにせよ、ここは三ツ谷の家なのだから、苦情やらなにやら言われるとしたらオレではなく三ツ谷。責任を取る? どうしてオレはそんなことを口走ったんだ、どう考えったって、責任取るのはこっちのほう。
もしコイツが追い出されることになったら、ウチに連れて行こう。
―― なんで同居するつもりになっているんだ。自分も大概、行為の名残に侵されている。
「ん、しょ」
「っおい、無理すんな」
「ンッ」
そのうちに三ツ谷が身体を起こした。ベッドについた腕は、自身を支えるのすら大変なようで震えている。咄嗟に背中に手を添えると、鼻を抜けるような声がした。窓は、まだ、開いている。夕方の時間ならまだ帰宅していない近隣住民も、いい加減帰ってきていることだろう。駄目だ。これ以上は。じわじわと燻ぶり始める欲を持て余しそうになる。……それは三ツ谷も同様らしい。きゅ、と肩を怒らせた格好で固まった。
ゆるりと、三ツ谷の視線がこちらを向いた。しっかりとその視線を受け止めて、じ、と見つめ返す。何度も口付けたせいで、なんとなく腫れている唇が、はく、空気を食んだ。
「……続き、する?」
「……しない」
「しないんだ」
「したいのか?」
「……んー、今日はもういいや」
「そうしてくれ」
「そうする。でも、ごめん。ちょっとまだ、火照ってるからサ」
「あー、触らねえほうがいい?」
「や、大丈夫。たぶん、……たぶん、もうすぐ落ち着くから」
変に背中を擦らずに動きを止めていると、下腹を撫でながら三ツ谷は深く息を吐き出す。何度かその表面を擦ってから、三ツ谷は自身の手のひらを見下ろした。ぐ、ぱ、と手指が動く。明らかに、そこにはこれでもかと零した体液が纏わりついていた。
「……こんなに濡れてたってのに、やっぱすげーワ、病院の薬って」
「薬? いつの間に飲んだんだよ」
「んーと……、飲むっていうか、ほら、あのゴム」
ゴム、と三ツ谷の語尾を繰り返す。ぴ、と指を立てた三ツ谷は、辺りを見渡してから、その立てた人差し指を無残に落ちているコンドームに向けた。ゴム。アレは確かに、ゴムだ。だが、薬という言葉には結びつかない。三ツ谷が言うということは、抑制剤のことだろう? オメガが発情期の症状を軽減させるために飲む薬。
首を傾げていると、ゴムを指していた指がくるりと宙で円を描く。それから、ぽと、と下肢を隠すタオルケットの上に落ちた。
「アレの袋に水入ってるの、覚えてる?」
「ああ、あのローションみたいな?」
「ウン、まあローション代わりにもなるんだけど。……あの水って、抑制剤入ってるんだよね」
「ハ」
落ちた手は、今も指先を擦り合わせている。滑るのか、べたつくのか、とにかく何らかの液体が付いているらしい。もしかすると、三ツ谷の言う抑制剤入りの溶液も混ざっているのかも。柔らかな布で拭うことはせず、ただ、皮膚に擦り込むように、馴染ませていく。
「理にかなってるよな。ゴムを抑制剤に浸すの。どうやったって使うし、ハメるし」
「……わからなくもねえけど、つけねえアホも中にはいるだろ」
「それはそれじゃん? 同意なしのナマは強姦なんだし。……ドラケンが誠意あるアルファで良かったよ」
「あ、そ」
よく言う。オマエがあのコンドームを出してくれなかったら、その強姦魔になっていたところだ。誠意あるなんて、大層な呼び方は止めてほしい。万が一に備えていた、三ツ谷が偉いのだから。
なんだか落ち着かなくて視線を逸らすと、隣から、ふふ、と吐息過多に笑う声がする。間もなく、肩のあたりに重みが乗った。ぴったりと、くっつかれている。触れた素肌は、確かに火照っていた。外から入ってくる涼しい空気を吸っているくせに、吐き出される息には熱が籠っている。
「ただ、ウン、……いくつか確認したい。良い?」
そんな熱っぽい息を使って、ゆっくりと三ツ谷は言葉を紡いだ。視線を戻すと、上目遣いを返される。きゅ、と、肺のあたりが苦しくなった。もう出し切ったと思ったのに、実際出し切っているはずなのに、なに中てられかけてんだ。ぐ、と奥歯を噛みしめながら、どうにか首を縦に振った。
「ドラケンはさ、なんでオレがオメガだって気付いたの」
「そんなん、オマエが甘ったるいフェロモン垂れ流してたからに決まってんだろ」
「それなんだよなあ……」
一度言葉を区切って、三ツ谷はため息を吐いた。うっすらと開いていた口は、ぴたりと閉じてしまう。上から見ると、ツンと尖っているのがよくわかった。それから、むぐむぐと言葉を探しているのも。疲れさせたからだろうか、普段よりも三ツ谷が幼く見えてきた。
「オレの発情期のフェロモンに気付けるアルファってさ、ほぼいないはずんだよ」
とはいえ、喋っている内容は、幼さと結びつかない。
「あんだけ甘い匂いしてたってのに?」
「んーとね、そもそもの仕組みとして、番を持たないオメガのフェロモンって、アルファなら誰もが持ってる受容体で感知できるモノのはずなんだけど、」
「オイ、難しい話止めろ」
「まあ聞けって」
つらつらと三ツ谷が発する言葉は、小難しさを帯びはじめた。こちとら中卒。高卒資格を取るために、一応夜間には通ってるものの、熱心に勉強をするような質ではない。受容体? 感知? 畳み掛けられる言葉を聞いていると、頭が回らなくなってきた。
その拒否感は顔にも表れていたのだろう。呆れたように、三ツ谷が頬を緩める。かといって、頭を使う説明を止めるつもりはないらしい。緩んだ唇が、ふわりと動いた。
「オレのはさ、そうじゃねーの。本当に、一握りのアルファじゃないと感知できないフェロモンなんだって」
「……それって生まれつき?」
「わかんない。小五で検査したときには、もうそうだった」
何かのタイミングで変質したのか、本当に最初から稀有なフェロモンだったのか。詳細に調べることはできなかったが、その体質のおかげで今日までアルファに気付かれることなく生きてきたという。
一握りのアルファ、ね。確かに、気付かなかった。アルファだオメガだという性別は、あえて開けっぴろげにするものではない。そういうのも相まって、他のアルファと思しき連中も気付いてなかったように思う。それこそ、柴兄弟はどれもアルファと聞いた。だが、今も三ツ谷とは穏やかな関係を続けている。
「オレの番、どっかにいんのかなあ」
「心当たりねえの?」
「うーん、ないなあ。小五より前に会ったアルファってことだろ、それだと八戒が怪しいんだけど、んん」
「ふわっとしてんなあ」
「だってアイツ、珍しく今回のヒート重いな~ってときでも、顔色一つ変えないんだぜ?」
「……まず、そういう状態でアルファに会うなよ」
「東卍やってたときに、ドラケンの鼻が今みたいに良かったら、ヤバかったかもね」
「オイ」
くすくすと三ツ谷は笑っているが、つまるところ、中坊の頃はヒートが来ようとオレ達と会っていたということになる。正気か? 気付かれなかったから良いものを、いざ勘づかれたらどうするつもりだったんだ。……勘づかれなかったから、あれほどまでに危機感が欠如してしまったのか。
反省しろ。そんな意味も込めて、三ツ谷の頭をわしわしと掻きまわした。艶のある反応はもうしない。控えめな笑い方も通り過ぎて、わはは、と大口を開けて笑い出した。
「なんならもう少し早く気付いてくれても良かったんだぜ?」
「ばかやろー、猿みたいに盛って取り返しのつかねえことになってたぞ絶対。絶ッ対!」
「ウワ、二回言った」
何が三ツ谷のツボに嵌ったのかはさっぱりだが、ケタケタと軽やかに笑い声が響く。散々嬌声を撒いた次は笑い声。いよいよ近所に狂人認定されてしまいそう。
ぴんっと三ツ谷の額を弾いてから、のっそりとベッドから降りた。ばたばたと揺れるカーテンを掴むと、すぐ下から車の通る音が聞こえてくる。道路は、近い。通りすがりにあの喘ぎ声を聞かれた可能性もあるのか。閉め切って、甘ったるい匂いをいつまでも漂わせる中過ごすのと、音を撒き散らす代わりに新鮮な空気を入れ続けるのと、どっちが良かったんだろう。……どっちもクソもない、ヤッちまった時点で「良い」なんて言えるか。
ため息を吐きながら窓を閉めた。ついでにカーテンも閉めてしまえば、室内は一気に暗くなる。ベッドにいる三ツ谷の表情は、読めなくなっていた。灯りのスイッチはどこだろう。手さぐりで、部屋の壁を撫でていく。
「もう一個聞いて良い?」
「おー」
「最近、なんか変わったことあった?」
そのうちに、指先がプラスチックを捉える。ぱち、押すと蛍光灯の白が降ってきた。突然の光に、目を細めてしまう。
振り返った先には、散らばった衣服と、ゴミ箱に入り損ねた性の残骸。そして、事後の色をたっぷりと纏った三ツ谷が見えた。
「……えっろ」
「オレの話聞いてる?」
「あー……、安定剤飲むのはやめた」
「え、そんなん飲んでたの、いつから」
「確か、……小三から? 十年くらいにはなるな」
習慣になるほどに飲み続けていたが、思えばそんなにも長い付き合いだったのか。三ツ谷との付き合いも長いほうだが、それよりもあの薬を飲んでいた期間のほうが長いとは。
ぺたぺたと足を鳴らしながらベッドに戻ると、おもむろに三ツ谷は両足を抱え来んだ。立てた膝に顎を乗せて、ふむ、と何か考え込んでいる。
「オレと会った頃には、もうアルファに成ってたんだ」
「あー、まあそうなるな」
コイツと会ったのは、小五になってすぐ。まだ、頭を剃っていなかった頃だ。一方、自分がアルファとわかったのは、それより二年ほど前のこと。……三ツ谷は、どうだったんだろう。小五の検査ではもうオメガに成っていた。じゃあ、その前は? オレがそうだったように、三ツ谷も分化自体は早かったのかもしれない。ただ、はっきりとした特徴が実感として現れなかっただけで。
「番の、条件って」
ふと、三ツ谷は呟いた。改めて、その旋毛を見下ろすと、先に丸く見開かれた瞳が飛び込んでくる。
「項を噛む、じゃないんだよな」
「……あくまで、項を噛むと番になりやすい、だっけ」
昔は、項を噛むイコール番になる、と考えられていた。だが、この現代において、それは否定されている。なんせ、噛まれたところで番にならなかったケースがいくつも見つかったからだ。
あっという間に静けさを顔に貼り付けた三ツ谷は、ぽそぽそと独り言のように続ける。
「ってことは、噛まなくても番は成立する……」
「つったって、項噛むくらいのショックはいるだろ」
「ショック、か」
どのアルファでも察知できるフェロモンが、ただ一人のアルファために組み替えられる。それだけの衝撃がないと、番にはならない。だからこそ、セックスしながら項を噛むのが手っ取り早いのだろう。
真剣な顔をして考え込んでいた三ツ谷が、ちら、と控えめな視線を送ってきた。おや、と目を向けると、すぐに逸らされてしまう。それどころか、膝に顔を埋められてしまった。何かマズいことを言ったろうか。いや、オレが吐き出したことなんて、三ツ谷も知っている常識だけ。うんうんと考え込ませる内容に降れたとは思いがたい。
「どした?」
「たとえば、さ」
「おう」
「……同じスミ、入れたのって、どう思う?」
ちら。再び、三ツ谷は窺うような目線を送ってきた。
『噛まなくても番は成立する』
聞いたばかりの言葉が、ぐわんと頭を揺らす。
オレは、三ツ谷の項は噛んでいない。未だ嘗て、一度たりとも。だが、オレのだと、言ったことは? ある。この龍はオレのモンだと、言った。確かに、言った。なかなか三ツ谷の髪が伸びなくて、急かしたこともあったっけ。オレのだろ、オレのなのに。最初こそ、ムッとされたが、つるんでいるうちに、当然のことのように受け入れられていった。
あれは、龍の、話だ。コイツ自身がそう、というわけじゃない。……どう、だろう。無意識に、オレの所有物となった龍を抱えている三ツ谷自身のことも、オレの内側にあるものだと思い込んでいたら。そうやって、オレのだと散々主張したせいで、三ツ谷の熱の矛先が、オレだけのものに変わっていったのだとしたら。
―― やっぱり、責任取るのは、オレのほうじゃねえか。
一つ息を吐き出して、腹を括った。
「三ツ谷」
「……ッス」
「今度、一緒に病院行くぞ」
「えっ」
「そんで番かどうか調べて、はっきりさせよーぜ」
悶々と可能性について考えていたって埒が明かない。まだるっこしいのは止めだ、止め。コイツの匂いがオレにしかわからないのは何故なのか、白黒はっきりさせようじゃねえか。
「まじで番、だったら、どうするんだよ」
「良いじゃん、オマエのパートナーとして生きてく。よろしくな」
「かっるいなあ、じゃあ番じゃなかったら?」
「そんときは、」
どうしようか。番なら手放すつもりはないが、そうじゃなくても近いところにいたいと思う。できれば、オレの隣にいてほしい。友人という意味でも、幼なじみという意味でも、無二の片割れという意味でも。考えてもみろ、同じスミ入ってんだぞ。この先、何が起きようと、オレらのこめかみには左右対称の龍が住んでいる。それで今更他人になろうって? 馬鹿を言え。この縁は、腐っても切れるもんか。
オメガだとか、アルファだとか、番だとか。そういうのに拘わらず、コイツが三ツ谷隆である限り、隣にいてほしい。家族を差し置いた一番にはなれなくても、その近くには立たせてほしい。
足首の辺りで交差している手に、そっと触れた。ゆるゆると撫でてから、片方だけ絡めとる。
「番前提に恋人になってほしい」
「~~一緒じゃん!」
「一緒じゃねえだろ」
「一緒だよ一緒、結局ドラケンのモンになっちゃうじゃん……」
「嫌?」
「イッ」
即座に手は振りほどかれてしまった。代わりに、三ツ谷の脚も崩れる。ぱさりとタオルケットが捲れて、その体が剥き出しになった。まだ、どこもどろどろの、ぐちゃぐちゃ。……身体の相性も、とにかく良かった。つい、じ、と見つめる目に、熱が籠ってしまう。
「やじゃ、なぃ……」
そう零した三ツ谷の顔は、オレの熱が移ったかのように火を噴いた。あー、イイ顔。
折角、誓い染みた約束を取り付けたのだ。キスの一つでもしてみるか? 覗き込むように顔を寄せると、わずかに悲鳴を上げてから、三ツ谷は瞼を閉じてくれた。閉じるのかよ。殴られるかと思ったのに。
奪った唇は、これまでで一番の甘さを含んでいた。