水2カップと塩少々
女体化
珍しい奴から電話が来た。
『だっ、ダガぢゃっ……、タカちゃんがぁあ!』
かと思ったら、悲痛の叫びをあげられた。何を慌てふためいている。まあ落ち着け。……そう、諭すことができたら、どれほど良かったろう。つられるように自分も動転し、気付けば慌ただしく家を飛び出していた。
そして、到着したのは、柴姉弟が使っているマンション。その、高層階。やっとエレベーターを降りて、駆け足で言われた部屋に向かう。一つ、二つと扉を数えたところで、ギッと足にブレーキをかけた。立ち止まった瞬間、ドッと息が上がる。普段は頼もしい厚手のコートが、煩わしくて仕方がない。コートの前を寛げながら、指先をインターホンに押し当てた。
「……ッ」
三ツ谷に、一体、何があった。
意識して深く息を吸い込み、扉の向こうの足音に耳をそばだてる。どたどたと品のない足音は、間違いなく、電話の主のものだろう。肺に満ちた空気を、ゆっくりと吐き出しているうちに、体躯が扉にぶつかる音がした。
「ッぁ、うッ、~~ドラゲン君ッ!!」
一拍遅れて、玄関扉が勢いよく開く。合わせて、俺よりも長身の、しかしひょろりとした体が雪崩れてきた。
「うおッ!?」
「たか、タカちゃんが、どうしようタカちゃんがッ!」
咄嗟に突っ込んできた巨体を受け止めるも、勢い余ってたたらを踏んでしまう。腹の辺りに纏わりつくそいつを見下ろすと、ズビッなんて鼻を啜る音が聞こえて来た。電話越しでも半べそをかいていたが、ガン泣きしてんじゃねえか。八戒の取り乱した姿に、頭がスッと冷えた。動揺した人間を見ると冷静になれるって、本当だったんだな。
「落ち着け、何があった?」
「タカちゃんがああ!」
ぐずる図体をどうにか引き剥がし、今にも項垂れそうな頭を強引に上げさせる。見えた両目は、真っ赤に充血していた。
八戒がこれほどまでに取り乱すとは、三ツ谷に何があったんだ。俺も、身構えた方が、良いのだろうか。ごくりと唾を飲み込みつつ、扉の向こうに目を向けた。
「ど、らけん……?」
「あ?」
玄関の奥、廊下の先に、ぽつんと女が見える。淡い髪色の女だ。遠目にも、見覚えがあった。八戒の姉か? いや、まさか。こいつの姉は、もっと凛々しい顔立ちをしている。視線の先にいるような、甘ったるい顔付きじゃあない。
なら、あの女は、誰だ。
目をカッ開きながら見つめていると、おもむろに女は足を縺れさせた。一歩二歩と後ずさり、やがて居室の奥へと行ってしまう。
「~~ッドラケン呼ぶのは反則だろ!」
間もなく、その女の悲鳴が響いた。
「……うん?」
見覚えもあったが、この声も聞いたことがある。これは確か、ええと、そうだルナだ。マナの方が近いだろうか。なんにせよ、三ツ谷の妹の声に似ている。「アタシもヒルトン行きたかった!」そう叫んだ声と、そっくりだ。今のアレは、ルナか、マナ? いや、それにしては大人びている。ルナはまだ高校生だし、マナに至っては中学生。そりゃあ、今時の女の子は、概して大人びているけれど。
唾をもう一度飲み下してから、柴家の敷居を跨いだ。未だ腰には八戒がぶら下がっている。歩きにくいったらない。靴を脱ぎつつ、腰に巻き付く腕を一本ずつ引き剥がす。すぐに痩身はべしょっと廊下に落っこちた。
あの女は、誰だ。三ツ谷に何かあったのかと思ったが、違うのか。八戒をからかおうと親戚の女を連れ込んだのか? まさか、あの三ツ谷が、可愛がっている弟分にそんなくだらない悪戯をするわけがない。
真新しそうな傷一つない廊下を進み、開きっぱなしのドアを潜った。
「アッ」
視界に飛び込んできたのは、二人の女だった。
一人は知っている。八戒の姉だ。記憶と違わず、目尻の先がキリッと跳ねている。ただ、以前見た凛々しさはなかった。代わりに、顔面いっぱいに辟易が浮かんでいる。ヘの字になった唇は、すぐに大袈裟なため息を零した。
「いいとこに来た。おい龍宮寺、コレのこと引き取ってくんない?」
「ッ柚葉、なに言ってんだよ!」
「仕方ないだろ、今のお前がいると、八戒ああだし」
「つったってドラケンはなくない!?」
「なくねーよ、お前がいちばん信頼してる男だろ、丁度いいじゃん」
もう一人は、柴柚葉にギャンギャンと噛みついている。その割に、耳につくような甲高い声にはなっていなかった。上ずってはいるものの、ハスキーを思わせる声色は耳に馴染む。
……やっぱり、ルナに、似ている。ぱち、ぱちんと瞬きをしながら、依然として吠えている女を眺めた。服の肩が、ずれている。肩だけじゃない、全体的に着ている服は大きかった。というか、アレ、メンズ物じゃねえか。あえて一枚だけオーバーサイズを選ぶ女はいるが、一から十まであのサイズを選ぶ奴がいるのだろうか? モデルが住まうこの家で、そんな格好をしているとなると、いっそう不可解が増してきた。
胡乱を携えながら、ひたり、足を二人の方に近付けた。
「っぅあ」
淡い髪色のそいつは、過敏に俺の気配を察知する。パッと振り向いた顔付きは、甘さこそ強いものの、既視感のあるパーツで構成されていた。ルナに似ている。マナにも、似ている。あの二人と劇的に違うところいえば、ぱつんっと布地を持ち上げる胸元だけ。全身だぼだぼなのに、そこだけパツパツって。着ている大ぶりなシャツ越しには、ぽちっと二つの粒が浮いていた。
ブラくらいつけろよ。ああいや、つい昨日までつける必要がなかったのか。そりゃあ、仕方ないよな。
……ありえない発想が、頭を過る。だが、目の前の光景は、もうそうとしか思えなかった。
「なあ、お前、もしかして」
そんなわけがない。そんな、ファンタジーの世界のような出来事が、起きるはずがない。確かに、タイプリープとやらをやってのけた後輩兼友人兼恩人はいる。けれど、そんな摩訶不思議な現象が、そこら中で起きて堪るか。
それでも、目の前にいる女が、あの男に見えて、仕方がない。
「―― 三ツ谷?」
「ウ、ッス」
ぽとりと返って来た響きには、やっぱり聞き覚えがあった。
つまりこれは、三ツ谷が女になった姿、らしい。
「ごめん、ほんとにごめん」
「だからもういいつってんだろ」
「でも、こんな体なのに、いきなり家に置いてくれなんて、迷惑すぎるだろ……?」
「お前さあ、なんで俺と二人っきりになった途端、殊勝になんの?」
あのマンションを出るまで、三ツ谷は俺も真顔になるくらいに駄々を捏ねた。床に寝転がって手足をじたばたさせるのではないかと思ったほど。とはいえ、弟第一主義たる柴柚葉が丸め込まれることはなく、淡々とこの体は俺に引き渡された。
正直なところ、受け止めた二の腕の柔らかさが、頭から離れない。
「だって」
「だって?」
「ドラケンに、ダサいとこ、見られると思わなくって」
「ダサくはねえだろ」
むしろ、可愛いよ。ぽろっと口からまろび出そうになる。可愛い見目をしているのは事実だが、中身は三ツ谷だ。可愛いと言われたって、嬉しくはないだろう。
「……なんで女になったとか、心当たりねえの」
「それがわかれば苦労しねえよ」
両脚を三角にして抱えた三ツ谷は、小ぶりになった膝に顔を突っ伏した。おかげで、経緯を語る言葉は、くぐもってしまう。
女の体になった理由はわからない。八戒の仕事に同行して渡仏して、帰国したのが昨日のこと。軽い打ち上げがてら、柴姉弟の家で軽く飲んで、寝て起きたら、こうなっていたという。三ツ谷の体の変化に、最初に気付いたのは八戒。雑魚寝していたが故に、目覚めて早々、この女体を目の当たりにしてしまったらしい。家中に響き渡る絶叫。慌てて起きる三ツ谷に、今度は泡を吹いて倒れる始末。困惑するうちに、柴柚葉が起きてきて、不審者としてシバかれかけたとか、なんとか。
何もかも、災難すぎる。
「なんなら、今からでもホテルとるからさ」
「ちょっと思ったんだけど、お前そのナリで、ふつーに身分証明書使えんの」
「えっ、使えるんじゃ、ない?」
「タカシだろ。三ツ谷隆。けど、今の三ツ谷って、明らかにタカシって顔じゃないじゃん」
「……やばくね?」
パッと顔を持ち上げた三ツ谷は、ぽかんと口を開けていた。
今更気付いたのかよ。つい、半目になってしまう。小ぢんまりと体育座りをする体をジト目で見やると、三ツ谷はぺちょりと開けていた口を覆った。
「うわ、やば、仕事のことしか考えてなかった」
「……仕事も仕事でやべーだろ」
「んん、もともと性別に頓着しない業界だから、どうにかなるとは思うんだよね。けど、身分証明書かあ、免許の写真と今、ゼッテー顔違うじゃん」
「妹の学生証借りた方が、まだそれっぽかったりして」
「それは流石に、いや、ぅ……、最終手段かな」
果たして、それは最終手段になるのか。提案したのは自分だが、真に受けるとは思わなかった。さては三ツ谷、冷静なふりして焦っているな?
焦らずに、いられるわけがない。寝て起きたら、性別が変わっていたのだ。男だ女だ、強く意識するタイプじゃなくとも、気になるに決まっている。
小さく畳んだ脚を抱えたまま、三ツ谷は膝に顎を乗せた。
「寝て起きたら元に戻ってくんないかなあ」
「じゃあ、……ベッド使う?」
「あっ! そんなこと言って、エッチなことする気だろ!」
「馬鹿言ってんじゃねえぞコラ」
「んっふふ、ごめん、ちょっと言ってみたくなって」
甘さのある顔は、くつくつと喉で笑い出す。焦っていると思ったばかりだが、存外余裕なのか。それとも、現実逃避をしないとやっていられないだけか。
大ぶりな布地の下で、小さく揺れる肩を見ていると、なんだか胸がざわつき始めた。煽られている気分になってくる。ご要望通りのエッチなこと、してやろうか。今の三ツ谷の体だったら、きっと問題なく抱けてしまう。
こいつを引き取ったのは、迂闊だったかもしれない。ちょっとでも気を抜くと、一線超えてしまいそう。よりにもよって、どうしてこんな煽情的な体付きになったんだ。ルナやマナみたく、ぺたんとしていてくれれば良かったのに。……あの二人も、年頃になればこうなるのか? いや、まさか、そんな。
悶々と思考を巡らせていると、視界の端にある身体の揺れが止まった。淡い色の唇からは、はあっと上向きのため息が零れる。
「もし戻んなかったらさあ」
「あ? 試しに寝て起きてから考えりゃいいだろ」
「もしもの話だって。……その時は、まずブラ買うからついてきてね」
「なんで俺を連れて行くんだよ」
「いい店知ってそうだから」
「女物の下着の店なんて知ら……、あー、」
「ほーら知ってる。ほんとコレ、やばいんだって。なんでもいいから支えが欲しい」
凛々しい表情を取り繕った三ツ谷が、畳んでいた脚を胡坐に切り替える。ぽよんと現れた二つの塊を、ほっそりとした指先が持ち上げて見せた。支えのないソレは、肉の柔らかさを露わにたぷたぷと揺れる。乳首の頭はちょこんと布地に浮いていた。……女の、煽情的な格好は見慣れている。裸同然の格好だって、毎日のように見てきた。にもかかわらず、男物の服に包まれた女体に、どうも心惹かれてしまう。鼻が膨らみそうになって、誤魔化すように視線を逸らした。
「……なあ、ドラケン」
「あんだよ」
ふと、首筋に視線が突き刺さる。こっそりと目を三ツ谷の方に向けると、未だ両手は自らの乳を抱えたままだった。女の手では、少々余る大きさのソレ。でも、俺の手の平だったら、ぴったりと収まりそうだ。揉みしだきたい。ぷっくりと膨れた突起を、転がして、舐ってやりたい。見ているだけで、疚しさが込み上げてきた。
これはいけない。だめだ。まずい。極力静かに唾を飲み下しつつ、ふいっと目を逸らし直した。
「この際だし」
「……」
「ほんとに、してみる?」
「…………」
「セッ」
「~~ッ言わせねえよ!」
「くす、ぇ、なんで、したくねーのセックス」
「だ、から、皆まで言うんじゃねえッ」
「ふふ、なに童貞みたいなコト言ってんだよ。絶倫すぎて彼女泣かせた男がさあ」
「それはそれ! これはこれ!」
押し殺した疚しさが、颯爽と目の前に舞い戻ってくる。どころか、やらしさを携えた体が、膝立ちになって迫って来た。相変わらず、その手は乳房を弄んでいる。たぷたぷ、たぽたぽ、膝が床を進むのに合わせて、柔らかそうに指が沈んでいた。
「マジな話さ、男んときから、ちょっと興味あったんだよね」
「意味わかんねー、やめろ、こっち来ンな、あと黙れ」
「あるじゃん、こいつカッケー、抱かれてみてえって感情」
「ないッ」
「俺にはあんの。で、今はこの体、女じゃん。するっとできるんじゃない? 貰ってよ、俺の処女」
「……処女がするっとできるかよ」
「そこはドラケンのすっごいテクでさ」
「俺をなんだと思ってんだ」
「絶倫」
「処女との相性最悪だろ、絶対」
絶ッ対。語尾に付け足した言葉を重ねると、三ツ谷はからからと笑った。あまりの軽快さに、毒気を抜かれてしまう。自らの乳房を支えていた手も、ふらりと離れた。それはそれで、胸は揺れる。抜けた毒が、戻って、きそう。
「よいしょ」
「あ?」
ふと、胡坐を掻いた膝の上に、体重が乗った。目鼻のすぐ先には、甘みの増した三ツ谷の顔がある。とっさに視線を下ろすと、柔らかな下肢がしっかりと俺の脚に乗っかっていた。
「してみよーよ、折角イイ体してんだしさ、俺」
「自分で言うなよ」
「でも、ドラケンだって、そう思うだろ」
こてんと首を傾げて見せながら、三ツ谷は俺の首に腕を回す。さらに体をぴったりと寄せてきた。必然的に、たわたな胸が、こちらに触れる。凸のない股座には、俺の中心が食い込んだ。
ンッ。不意に零れた嬌声に、うっかり血が滾る。
「しようぜ、―― えっちなこと」
はにかみながら囁かれてしまうと、抗う気力が削がれてしまった。
ああくそ、もう、どうにでもなっちまえ。飛び出しかけた舌打ちは飲み込んで、背後のベッドに三ツ谷を押し倒した。
支えのない乳房は、重力に従って左右に流れる。それでも、五指で集め直せば、十分な弾力が伝わってきた。柔らかい。上質な筋肉とは異なる、脂肪由来の柔さ。舐るような指の動きに合わせて、たわわな二つの塊はぐにゅりと形を変えた。
「ふ、ふふっ、すげーがっつくじゃん、そんな触りたかった?」
「そりゃあな」
「あとで挟んでやろっか、お前のデカチン」
「……パイズリはシュミじゃないからいい」
「うわ、男のロマンを!」
「あれそんなに良くねえじゃん。見た目がエロいだけで」
「へえ、されたこと、あるんだ」
「三ツ谷はねえの?」
「ないよ。そもそも、こんなおっぱいおっきい子と付き合ったことない」
やわやわと捏ねているうちに三ツ谷の右手も伸びてくる。長い睫毛を伏せさせながら、俺の手を縫うようにして指先が沈んだ。点々と何か所か突いたあと、人差し指はツンと尖ったところに辿り着く。ほっそりとした指先は、突起の周りをくるくると撫で始めた。描かれる円は、徐々に小さく、狭まっていく。布越しでも、イイらしい。擦っていくにつれて、三ツ谷の吐息には熱が混じり出した。
俺も、ソコ、触りてえな。
乳房の枠は捉えつつ、指の一本をもう片側の尖りに引っかけた。
「ぁっ……!」
「気持ち良い?」
「ぅん、いい、ぁ、揉むよりずっと、きもちぃ……」
「そんな違うんだ」
「全然、違ぅ、ンッ、胸は、ただ触られてんなぁって、だけだった、し」
「じゃあ乳首は?」
「ひっ、ァ、あっ、んふ、背筋じゅわじゅわして、イイ」
話している間にも、三ツ谷の指は大胆になっていく。捏ねるように潰してみたり、二本の指で抓んでみたり。布越しだからか、ちょっと力が入っても、「気持ち良い」の範疇になるらしい。ふぅん、それくらいしっかり触っても良いんだ。感心を覚えたついでに、指の動きを模倣する。もう片方を、それまでより強めに摘み、擦って、捏ねる。……自然と、三ツ谷の口から漏れる声はいっそうの甘さを孕んだ。ただでさえ垂れている目尻も、とろんとだらしなく緩みだす。
「ぁ、あぅ、あッ」
女の体になったから乳首でも感じられるようになったのか、そもそも素質があったのか。汗を吸い始めたシャツには、捏ね繰り回された突起の形がくっきりと浮かんでいる。しつこく弄った甲斐あって、最初見た時よりもぷっくりと膨れてしまった。色だって、濃くなっているに違いない。
三ツ谷と同じか、それ以上に熱っぽいため息を吐いてから、シャツの裾に手を掛けた。ぶかぶかな布地を持ち上げると、長さの余ったベルトと、なだらかな腹が覗く。男の体にはないくびれに、薄く浮いたあばら。さらに捲って行けば、横に流れつつも丸みを保った乳房が見えた。それに、赤みの強い、突起の縁も。ああ、やっぱり、色が濃くなっている。こんなことなら、触る前の淡い色味も確かめておけば良かった。徐々に色が変わっていく様を見逃したのは、ちょっと惜しい。
「……ドラケン」
「あー?」
「目、やばいよ。ギラッギラ」
「そういう三ツ谷だって、顔トロットロだよ」
「俺はだって、気持ち良いもん。腹の奥も、股んトコもじんじんしてきた」
こんなに感じやすいんだね、女の体って。蕩けた顔で言いながら、三ツ谷は晒された下腹に手を乗せた。形のいい臍が隠され、思わせぶりにくるくると丸を描く。内腿に至っては悩まし気に擦り合わせられていた。腰が揺れているのだって、目の錯覚では、ない。
「なあ、」
「ん」
「そろそろ下もさ、脱がしてくんない」
「……脱ぎたいの?」
「脱ぎたいっつーか、脱がされたい」
「なんだよそれ」
「なんだろう。ドラケンにさあ、めちゃくちゃにされたいんだよね」
「ああ、そういやぁ男ン時からの念願って言ってたもんな」
「うぅん、そうだけど、ちょっと違くて」
「はあ?」
「男ん時は、雄々しくてギラついたドラケンを見たくて抱かれてえ~って思ってたんだ。でも今は、女になった体をぐちゃぐちゃに犯してもらいたいっつーか……、この言い方で伝わる?」
胸を存分に晒したまま、三ツ谷はこてんと首を傾げる。小ぶりな唇は、ツンと尖っていた。
豊満な体付きで、幼気な仕草をするのは狡い。ギャップで頭がくらりと揺れてしまう。会話の全てを放棄して、三ツ谷の体を貪りたくなってきた。そりゃあ、最終的には貪るのだけれど、まだ理性は手放したくない。どうして今日の自分は余裕がないのだろう。極上の女体を差し出されているから? どうだろう、女のエロい体付きには、昔から耐性がある。
「あー……」
たぶん、きっと、おそらく、―― あの三ツ谷隆が、この体をしているからだ。
もし三ツ谷が女だったら、今日を待たずに大事故が起こっていた気がしてならない。こいつが男で良かった。いや、今は女の体をしているけれど。
艶めかしい体を見下ろしてから、深く息を吐き出した。細く、長く、時間をかけて肺の中身を空にする。たっぷりと吐き出し切ったところで、ゆっくり酸素を取り込み直した。両手は、柳腰を締め付けているベルトに乗せる。理性がすり減っていくのを感じながら、金具から引き抜いていった。
「んん、なんて言えばいいのかなあ」
「いや、それは、いい。なんとなく、わかった」
「ほんとに? ドラケンの絶倫を見せつけられてカッケ~ってしたいんじゃなく、絶倫のドラケンに搾り取られてえ~って、あ、いや今は搾り取るの俺だワ、ドラケンの全部搾り取り」
「だから、わかったってば。腰上げろ、脱がすぞ」
「あ、ウン」
声をかけると、素直に三ツ谷は従ってくれる。寛げたズボンを、一思いに引き下げた。勢い余って、ボクサーパンツもずれてしまう。腰骨の片方は、すっかり顔を出した。しかし、もう一方は腰の高いところに引っ掛かったまま。ウエストのゴムが、斜めに伸びている。黒色の帯は、恥骨部、鼠径部と跨いでいた。それだけ、引っ張られていても、布地にはゆとりがある。
「……パンツもだぼだぼじゃん」
「そう、なにもかもちっちゃくなっちゃった。スースーして、落ち着かねぇったら」
「フツーの短パンみてえ。ああでも、尻の方はそうでもない?」
「んわッ」
試しに、指先をひらひらしている裾に引っかける。出来上がった隙間からは、股関節の窪みが見えた。手を滑り込ませても、まだ余裕がありそうだ。もっちりと柔らかな肌の感触につられて、ひとまず利き手を潜り込ませる。汗ばんでいるせいもあり、三ツ谷の柔肌がぴったりと手の平に吸い付いてきた。指先を臀部に向けつつ、もう片方の手も潜らせる。すぐに、両手指の腹は、肉感の増した尻に沈んだ。
「すっげ、むちむち」
「あ、ンッ、」
もっと、しっかり揉みしだきたい。欲に任せて、五指で尻たぶを鷲掴みにすると、ボクサーの裾が捲れ上がる。余っていた布が後ろに持っていかれて、ゆとりも失せた。その、おかげで、ふっくらとした土手の形が浮き上がる。じんわりと尻たぶを割り開けば、三ツ谷の腰がかくんと揺れた。足の先は、忙しなくシーツを蹴っている。
「ん、ふ……、ぁ、じれった、ァ」
「脚開いてみれば、いい感じに食い込むかもよ」
「ガニ股になれって? それは、ン……、恥ずいって」
「今更だろ、ほら」
「ァ」
妙な恥じらいを残す三ツ谷を促さんと、一旦右手を引き抜く。すぐにその手の平は内腿を掬い、グと外側へと押しやった。隙間のある裾から、ニチャリと濡れたヒダがはみ出る。湿って色味を濃くした股布も見えた。腰は今も、悩まし気に揺れている。ぴったりとフィットしていない布が、さり、ざり、粘膜に擦れているらしかった。見下ろしている間にも、シミの範囲はじわじわと広がっていく。
「えっろ」
「あ、ン」
まだ、尻は揉んでいたい。でも、濡れそぼっている秘部も弄ってやりたい。どうして俺の手は二つしかないんだろう。どこもかしこも撫で回したいのに、たった二か所しか選べないなんて。
ぐう、喉を鳴らしてから、名残惜しくもボクサーから左手も引き抜いた。もう一方の太腿も、ぐっと浮かせる。……俺の意図に気付いたのだろう。うっそりと笑った三ツ谷が、流暢に自身の膝に手を引っ掛けた。
「これでいい?」
「うん。完璧。絶景」
「スケベだなあ、M字開脚させるなんて」
「脚開けって言ったのに、お前がなかなか開かねえからだよ」
「ばぁか、恥ずいって言ったろ」
「……でも、開いてくれたじゃん」
「それは、ほら、ドラケンが腕足りねえ~って顔するから」
「エ、俺そんなわかりやすかった?」
「ふふ、鼻膨らましてんのに眉間に皺寄ってんだもん、面白かったよさっきの顔」
「あーあー、忘れろ」
「ンッ!」
咄嗟に鼻を擦ってから、誤魔化そうと割れ目に指を押し当てた。湿った布の向こうに、愛液の粘着く感触がする。溝に沿わせて指先を動かせば、すぐに布地は恥部に張り付いてくれた。ヒダのカタチも、スジの溝も、窪みの上にある花芯も、くっきりと浮かぶ。今まで見てきたどのカラダより、クリ、大きいかも。パンツ越しでも、ぷっくりと勃っているのがわかる。皮を剥いて、付け根を揉んでやったら、ガキのチンコくらいにはなったりして。鼻息を荒げながら、ツンと立った突起の根元に指を沈めた。
「ぁ、ん……、ゥ」
「もっと声出せよ」
「エ、なんか、むずい」
「むずい?」
「えっち、に、ンっ、喘げる自信、なぃ、ァ」
「……安心しろよ、萎えねえから」
「あ、ぁあッ、ア」
とん、とん、と一定のリズムで付け根を揺すると、それに合わせて三ツ谷の唇から甘い鳴き声が零れる。これのどこがエロくないって? 十分、可愛いし、そそられる。それとも、三ツ谷はもっとエロい嬌声を知っているのだろうか。だったら、聞いてみたいものだ。
クリトリスを擽りながら、薬指を窪みに添える。キュゥウと圧をかければ、その分股布が奥へと沈みこんだ。食い込みが深くなればなるほど、濡れた粘膜がはみ出してくれる。熟れ切ったヒダは、左右どちらも淫靡に艶めいていた。
ごくりと生唾を飲み込んでから、下着のゴムに手を掛けた。
「ァ、あっ、ンッ」
食い込んだ布地を、わざと時間をかけて脱がしていく。おかげで、濡れそぼった股座から太い糸が引くのが見えた。ねっとりとしたソレは、布と粘膜とを繋いで、間もなくぷっちゅんと途切れる。白っぽい粘液は、露わになった膣口を汚した。大きく脚を開いているのもあり、ピンク色の肉襞がよく見える。膨れた女芯に至っては、既に皮からちょこんと顔を出していた。
「……つるつるなのも、女になったから?」
「ぁ、どんな幻想だよ、男ン時から処理済みだって」
「マジ?」
「うん。結構快適だよ。オススメ」
「勧められてもなあ」
軽口こそ叩くが、視線は蜜口から離せない。愛液は引っ切り無しに溢れてくるし、襞は物欲しそうにうねっている。惹かれるまま会陰からクリへと指を滑らせれば、瞬く間に中指は透明な膜につつまれた。これだけ濡れていたら、ローションを足す必要もあるまい。もう一度、今度は上から下へと滑らせてから、柔肉に指先を沈め込んだ。
「ッあ!」
「ぉワ」
たったそれだけで、ぴゅっと小さく潮が飛ぶ。ナカを確かめるように時計回り、反時計回りと指を動かせば、また三ツ谷は腰を浮かせながら透明な液体を零した。
Gスポットだった? まさか、それはもういくらか深いところにあるはず。……なんでもないところで、これだけ感じられるのなら、ソコまで達したら悶絶するのでは。むくり、ずぐり、自身の中心と、好奇心とが首を擡げる。にやけた表情を引き締める余裕はない。やらしい、そう三ツ谷に咎められるかも。なら、諫められる前に責め立ててしまえ。いっそう深く笑って、じわり、じゅわり、指を奥へと入れ込んだ。もちろん、指の腹で、ざらつく表面を擦りながら、だ。
「んっ、ぁ、あ~、それ、いぃ、ア」
「このへんじゃね、イイトコ」
「うん、そこヤバ、ンッ、ぁ、アッ」
「ふ、その調子で喘いでよ」
「変じゃ、なぃッ? ンぅ、ふ」
「全然。むしろエロい」
「ほんとかよォ、ッあ、んクっ、ァ、あっ」
痛がる様子がないのを良いことに、薬指、人差し指と足していく。あっという間に三本咥え込んだ膣口は、しとどに蜜液を溢れさせた。激しく抽挿しているわけでもないのに、水音が立つ。ニチニチ、クチクチ、かき混ぜれば混ぜるほど、愛液は白く濁りを帯びていった。
「なあ、三ツ谷、わかる? 本気汁出てきてんの」
「あは、だって、すっごい、きもち、いぃ、もン」
「乳首弄ったときも同じこと言ってたじゃん」
「そうだけ、どッ、ァ、これも、しゅご、ぃ、ァ、あっ」
あんッ。一際高く喘いだかと思うと、おもむろに三ツ谷の背中が仰け反った。抱えている脚、その先がピンと強張る。指先には、細かい震えが伝って来た。
「お、イッた?」
「わかンな、ぁッ、あ、まって、きもちいのすごぃ、から、すとっぷ」
「んー……」
「んッ、すとっぷ、だっ、て、ばぁッ、ア、ヒッ」
強張った身体を見下ろしながら、ちゅこちゅこと指を出し入れする。イッたばかりの体を、続けて刺激されるのは酷だろう。男だって、射精した直後に扱かれるのはキツいのだ。連続してイケる身体になったとはいえ、辛いものは、辛いに決まっている。
それは、それとして、猥らな色気を放つ体を、苛めたくて仕方なかった。おかしいな、これまでは女体を労わった、尽くすようなセックスができていたのに。相手が三ツ谷だから? 元が男とわかっているから、加減する気になれないのかもしれない。
物思いに耽りつつも、狭苦しい肉筒を穿る動きは止めてやれなかった。
「っあ、くそ、ン゛ッぅ、ぁん、ふ、あ゛ッ!」
「は、声やば」
「ん、うんっ、っるせ、ァ、やば、だめっ、らめすごぃの、グる、ゥ」
さっきの甘イキなら、今度は深イキってことかな。ヘコヘコと揺れる下腹を眺めていると、ふと、皮から見え隠れする肉芽が目に留まった。はは、ココも抓んだら、さらに善がり狂ってくれそう。ほくそ笑みつつ、自由な方の手を突起に伸ばした。
「ヒ」
引き攣った声が響く。ちらりと目線を擡げれば、潤んだ目をした三ツ谷がふるふると首を振っているのが見えた。喘ぎの合間には、「ダメ、それはダメ」と聞こえてくる。
ダメってこた、ねえだろ。
そもそも、俺にぐちゃぐちゃにされたいんじゃ、なかったの?
うっそりと微笑んで見せると、三ツ谷の唇がわなりと震えた。そのくせ、瞳は欲を露わに細められる。なんだ、「ダメ」も「イヤ」もフリだったのか。そういうことなら、遠慮なく。
「ふふ」
「ッあ゛」
三ツ谷が気持ちよくなれる一点を抉りながら、女芯の粒を、キュゥウと摘まみ上げた。
「~~ッ!」
その、瞬間だ。これまで、一番大きく、三ツ谷の腰が跳ねた。俺の指と指の間からは、勢いよく透明な液体が噴き出ていく。三秒か、四秒か。収まったかと思っても、またぷしゅりと溢れ、一旦止まり、さらにぴゅっと飛ぶ。噴き出た潮のほとんどは、俺のシャツに引っ掛かった。跳ねた水滴の一部分は、口元にもついている。ちろり、舌で舐め取れば、汗に似た味がした。
「派手にイッたな」
「ぁ、あ……、なにこぇ、男ンときと全然、ちが、ぅ、ンッ!」
「はは、噴きすぎ。そんな気持ち良かった?」
「んぅ、ふ、わかんな、ぃ、ふわふぁすゆ」
「ったく、三ツ谷ばっか良くなっちゃってサ。まだ俺は突っ込んねぇってのに」
「ンッぁ、ごめ、ンッ、」
「ワ」
ぴ、ぴゅ、未だに愛液を撒き散らしながら、三ツ谷は自らの秘部に手を掛ける。ツポンと指を抜いてやれば、入れ替わるようにほっそりとした指先が淫唇を押さえた。大きく脚を開いている上に、左右に割り開けば、うねるナカがすっかり見える。くぱりと開いた媚肉は、見るからに雄を求めて打ち震えていた。
「どぉぞ、いぃよ、ハメて……?」
「ハメられたい、の、間違いじゃね?」
「んふっ、そぉかも。ほらぁ、はやくハメてよどらけぇん」
ほとんど無意識に、サイドテーブルに手を伸ばす。指先が濡れそぼっているのも構わずに、一番上の引き出しを開けた。手前にある箱を引っ掴み、雑に中身をぶちまける。そのうちの一個は、ぼとり、三ツ谷の下腹に落ちた。
「……つけちゃうの」
「マナーだろ」
「そう、だけど」
「ナマがいいって?」
「ん、いや、ぇっと……」
ベッドに撒き散らした数個はそのまま、三ツ谷の腹に落ちた一包を拾い上げた。ぐっしょりと濡れたシャツは脱ぎ捨てて、手早く前を寛げる。パンツを引き下げれば、ぐんっと肉棒は反り返った。腹につきそうなほどに、ソレは膨れている。あまりの勃起具合に、我が事ながら笑えてきた。イイ女を前にしているとはいえ、これは長い付き合いのダチだというのに。
汚れた指先をベッドシーツで拭ってから、ビッと包装を破った。
「―― うれしく、って」
薄膜を摘む手が、一瞬ぎくりと震える。
目線だけ持ち上げれば、ふにゃりと蕩けた顔をする三ツ谷が視界に入った。秘部を、俺に差し出した姿勢で、花の咲くような笑みを浮かべている。
「えっぐい手マンされたのに、大事にされてる! って気になっちゃった。ふふ、なんか笑えんね」
だから、さあ。エロいことをして見せながら、幼気な仕草すんの、やめろって。ぷつ、ぷつり、脳内で理性の糸が途切れていくのを聞きつつ、無心でゴムを取り付けた。一回、二回と扱いて、正しく覆われているか確かめる。引っ切り無しに溢れている愛液を掬って、それとなく塗せば準備は終わり。
良い言葉を返せないまま、ぷちゅ、先っぽを差し出された秘孔へ押し当てた。
「ァ」
薄膜越しでも、ぬかるんでいるのがわかる。しかし、襞の奥は、酷く狭かった。指が入ったからといって、陰茎も簡単に入ってくれるわけじゃない。ちゃんと定めないと、ズルンと滑ってしまいそう。角度を調整しつつ、張り出た亀頭をゆっくりと媚肉に食い込ませていく。
「っはぁ、ンっ、ぅ」
「いたく、ねえ?」
「ん、ぁ、平気、ア、ケド、ひりひりする、かも?」
「ローション、足す?」
「だいじょうぶ、じゃないかなあ。ぁ、ンン、あっつ、ちんぽってこんな、熱いんだね、」
「まあ、今日はガチガチな方だけど……」
「んふ、俺の体で興奮してくれたんだ、あは、いいね、うん、んふ、うれし」
ちらりと三ツ谷の顔を盗み見ると、真っ赤に火照りながら目元を蕩けさせていた。瞳が潤んでいるのは、痛いとか、苦しいとか、そういうマイナスな感情由来では、ない。欲情した故の、生理現象だろう。
可愛いな、くそ。薄く下唇を噛みながら、切っ先をもう幾何か奥へ進めた。熱を持った粘膜がラテックス越しにぴったりと吸い付いてくる。まだ、埋め始めたばかり。カリ首すら、縁を越えていない。浅い入口だけで、これほどまでに善くなったこと、あったろうか。相性が良いのか、単に三ツ谷が名器なのか。奥、深いところまで入れ込んだら、どれほどの快楽が訪れるのだろう。
息を荒げながら、浅いところをちゅこちゅこと行き来する。熱い・熱いと呻いていた口は、だんだん、アとイしか言えなくなってきた。半開きの唇からは、唾液が伝い落ちている。蕩けた顔、しやがって。ほとんどイッてるだろ、お前。俺だって、イキたい。三ツ谷ばっか、狡い。
ぬ、ぼり。張り出たエラを、蜜壺に押し込んだ。
「ぁ、っは、ァ」
「みつやぁ」
「ん、ァ、あぅ……?」
「もっと、深くハメて、いーい?」
「ぁ、んぅ、ぅんっ、いーよ」
合わせて覆いかぶさると、三ツ谷の腕が俺の背に回った。本来の手指よりも、一回り、いや二回りは小さいそれ。俺の知っている、三ツ谷のものでは、ない。しかし、鼻孔を掠めるのは、間違いなく三ツ谷の匂い。どこもかしこも丸みを帯びて、小ぶりになってしまっているけれど、確かにこの女は、三ツ谷だ。
女の体だから、三ツ谷相手でも興奮できた。
と、最初は思っていたけれど、別に女の体である必要はないのかもしれない。三ツ谷が、真っ向から俺を求めてさえくれれば、おそらく自分は、受け入れてしまう。もとい、手を出してしまうのが、目に見える。
気付くと、顔を寄せていた。じっとりとした鼻先が擦れる。軽く結ったままの髪がぱさりと垂れて来た。毛先が、三ツ谷の頬に擦れる。たちまち、甘ったるい顔が、さらに溶けた。淡い色味を漂わせる瞳は、ゆっくりと瞬きをする。
目線を絡めたまま、どちらともなく、唇を重ね合わせていた。
「ん……、ふ」
「っ、ム」
「ぁッ、ん、んン」
触れるだけで我慢できたのは、一秒よりも短い。お互い堪え性はなく、すぐに舌を伸ばしてしまった。興奮しているせいもあり、唾液が過分に溢れてくる。汗ばんだ体もぴったりと寄せた。余すことなく、この体を貪りたい。口内を味わいながらも、三ツ谷の胎に熱を食わせていった。密着度が増せば増すほど、繋がりが深く、強く、色濃くなっていく。……そして、コツン、切っ先は最奥の壁にまで辿り着いた。
「ぁっ……!」
「っは、痛い?」
「ンッ、だい、じょーぶ」
「くるしく、は、ねぇか」
「だいじょぉぶだ、ってば、ふふ、やさしぃなあ、もお」
「ンだよ、優しくしちゃ悪い?」
「えぇ、んん……」
内緒話をするように囁くと、三ツ谷も声を潜めながら答えてくれる。吐息を過分に含んだ声は、放たれる度に唇の上を擽った。荒くなった鼻息だとか、喧嘩した時ぶりに騒ぐ心音だとか、生きている音もたくさん伝わってくる。
ぴったりとくっついてするの、すげえ、イイな。気に入った。また、しよう。誰と? 誰だろう。そうだな、三ツ谷とまたできたら、幸せになれると思う。
「あんまりやさしいとさあ」
ふと、三ツ谷の声が耳に響く。じんわりと鼓膜を震わすソレは、聞き馴染んだモノと、何故か近い音に聞こえた。
「どらけんのこと、―― すきになっちゃう」
眼前にある蕩けた顔が、ほんのりと恥じらいと困惑を浮かべる。
ああ、くそ。可愛いを、通り越した。こんな顔を見たら、愛おしくなってしまう。
「なってよ、好きに」
「ぇ、……ぁ、あっ」
止めていた律動を、ゆっくりと再会する。ほんの少しだけ腰を引いて、とちゅん、またちょっとだけ熱を抜いて、最奥をこつん。激しいピストンはせず、ゆったりとした動きで深いところに圧をかけていった。
「あっ、ァ、あ、あッ」
浅いところも気持ち良さそうだったが、奥まったところも嫌いではないらしい。窮屈な肉壁を何度も抉じ開けて、ぱちゅん、くちゅん、ぬかるんだ粘膜を暴いた。先っぽが埋まっている辺りは、狭まっている分、当然締め付けは強い。かといって、竿の辺りが緩いかというと、そうでもない。雄を搾り取らんと、三ツ谷のナカは艶めかしくうねっていた。溢れ出る愛液は、欲を煽るように粘着いた音を響かせてくれる。
「っひ、ァ、あん、ン゛ッ……、あ゛、ア!」
控えめだった喘ぎは、徐々にボリュームを取り戻し出した。息を吸っても、吐いても、嬌声が零れ落ちる。それも、どろりと溶けて、濁った音。もう、三ツ谷の理性は、ろくに機能していないのかもしれない。
それなら、俺も手放してしまおうか。チュッと濡れた唇を啄んでから、名残惜しくも上体を起こした。張り出た腰骨を、両手で挟む。固定されるのを嫌がって、柳腰が妄りにくねった。それでも押さえつける力は緩めず、ニヂニヂと熱を引き抜いていく。すべては抜かない。せいぜい、陰茎の半分くらいまで。
ふう、息を吐いていると、三ツ谷の腰がカクカクと揺れ始めた。最奥が空虚を覚えたらしい、妄りがましく下腹が跳ねている。
「ぁ、どら、けんっ、やぁッ、ぬかなぃ、でぇ……」
「うん?」
「おくっ、おくもっとッ! とんとん、し、て」
「ン~」
「ふかい、とこッ、いっぱい、して、おねがぃ」
「……ふふ、うん、いーよ」
安心しろよ、そんな風に必死におねだりしなくたって、すぐに満たしてやるからさ。
ひとつ、舌なめずりをしてから、―― 一思いに、最奥めがけて貫いた。
「ッあ゛、ぁ、アッ、あぅ、んッ、ンぁ、あ」
ばつんッと捻じ込んだところで、素早く腰を引く。先ほどより抜く幅は控えめ、代わりにより強い圧を掛けるように熱杭を押し込んだ。寸分の隙間も惜しいと、腰を掴む手には力が入ってしまう。柔い肉に、ミヂリと指が食い込んだ。痕に、なっちまうかもな。申し訳ない一方で、三ツ谷の白い肌に己の手形が残ると思うと、堪らなく興奮もしてしまう。
「あッ」
胴の横にはみ出た脚が、宙を蹴った。引き攣るように、生白いソコがピンと張る。さらけ出された喉に、反り返る背。たわわな胸は強調するように突き出された。やっぱり、手が、足りない。せめてもう二本あればなあ。ピンッと勃った二つの乳首のことも、あやしてやれたのに。
下らない妄想を浮かべたところで、さらにもう一度、最奥部を穿った。
「~~っぁァアッ」
「ッぐ、ぅ」
途端、一際きつい締め付けが襲ってくる。根元から亀頭の先まで、ミチミチと媚肉が纏わりついてきた。込み上げてくる絶頂感には抗えない。どくんと脈打つようにして、薄膜越しに吐精した。合わせて詰まった息は、三秒経ったところでどっと戻ってくる。荒い呼吸の音を取り繕えないまま、緩く腰を振って管にある残滓も出し切った。
「っふ、ぅ、はぁッ、」
「ッ、……っ! っぁ、ンぅッ」
壮絶に達した女体には、他愛のない律動も毒らしい。再度三ツ谷の足は伸び、下腹を震わせながら潮を零している。この一時間そこらで、どれだけ漏らすつもりだろう。入れる前から噴いて、入れても零して、達して溢れさせて。この調子では、抜いた時にもびゅるりと出てきそう。下卑た期待をしながら、ゆっくりと腰を引いた。
「ま、って」
「え」
引こうと、した。
しかし、三ツ谷の脚が、のろりと絡み付いてくる。派手にイッたばかりだ、さぞ体は怠いはず。にもかかわらず、しなやかな二本は、存外しっかりと俺の腰に絡んだ。
「もう、ちょっと、このまま……」
「……続きしたくなっちゃうから」
「ぅん、ンッ、うん、おれも、シたぃ、」
「なら、ゴムかえねーと」
「ァ、うん、ン」
ぺちり、諫める気持ちを込めて、三ツ谷の太腿を叩いた。呼応するように、そばにある下腹が揺れる。未だ俺を咥え込んでいるナカも、キュッと震えた。意図して、まぐわっているときほどの、苛烈な締め付けはない。それでも、埋めている熱をぶり変えさせるには、十分な刺激だ。達して間もない自身は、早くも滾りを取り戻してしまう。
このまま、もう一回、致してしまおうか。
いや、だめだ。いくら何でも、ナイ。ぬかろく・ふかしち? 馬鹿を言え、そりゃあ俺ならできるだろうけれど、それをされて辛いのは女の方。……相手は、三ツ谷だ。今でこそ女の体に成っているけれど、根っこは男。それなら、耐えられる? どう、だろう。試してみたい。自慢の脚で、蹴っ飛ばされるかな。踵が飛んでくる前に、快楽につき落とせば、存分に貪り尽くせるのではないか。
欲が、とめどなく溢れてくる。
「んふ、ふふふ、おっきくなってきたね」
「……」
まろい声がした。舌が、もたついている。すっかり蕩けた顔に相応しい、拙い声だった。その音は、耳にするりと入り込み、鼓膜にいつまでも余韻を残す。
苛々、してきた。胸焼けしそうなほどの甘さが、頭から離れない。首を振ったってダメ。呻いても、ため息を吐いても、そこにあ佇んでいる。もういっそ、この欲望に屈してしまおうか。ぐずりと理性が蕩けるが、なけなしのプライドが溶けだすのを堰き止めた。三ツ谷に、余裕をなくした様を見せたく、ない。情けないところ、見られたくない。こいつにとって、最高にカッコいい男で、ありたい。
歯を食いしばった。三ツ谷の腰を掴む手に、ギリリと力が籠る。柔肌には、また指が食い込んでしまった。
「もう抜くぞ」
「ぁっ、あっ!」
返事は聞かない。文句を言われる前に、ずるりと腰を引いていった。抵抗のつもりか、三ツ谷の艶めかしいはらわたは熱を追いかけるて迫ってくる。そんなにコレが気に入ったのかよ。本当に次はナマでぶち込んでやろうか。青筋を浮かべつつも、きゅうきゅう纏わりついてくる媚肉から、欲の塊を引き抜いていく。
あと、ちょっとで抜ける。もう少しで、取り出せる。このカリ首さえ潜ってしまえば―― 。
「あ、」
ぢゅぽ、と、水音が立つ。
てらてらと艶を放つヒダから、半勃ちになったソレが這い出てきた。……しかし、出てきたのは、自身だけ。被せていた薄膜が、ない。
ひく、と、頬が引き攣る感触がした。
「ぁ、んっ、ぅ……?」
今なお疼いている肉襞から、人工的なピンクが垂れている。きゅ、きゅん、粘膜が蠢くのに合わせて、そのラテックスもひくひくと震えた。垂れた先にある穴からは、ツゥと白濁が滴り落ちていく。
「ッ」
自分はAVでも見ているのだろうか。そうとしか思えない絵面に、カッと目の前が赤くなった。奥歯はぎりぎりと擦れるし、眉根は異様に寄ってしまう。
性急に、引き抜くんじゃなかった。後悔と興奮とを入り混ぜながら、膣口に引っ掛かったゴムを睨みつける。その間にも、ぶちまけた精液は零れていく。叫びたい衝動を押し殺して、指先に薄膜を引っ掛けた。
「あンッ」
ぬかるんだナカから、ツポンと抜ける。重力に従って、液溜まりが下に垂れた。過分な愛液を纏ったソレは、うっすらと白色を纏っている。ぽ、たり。やがて、膨れた切っ先から雫が落ちた。
いや、これは、雫では、ない。
「ハ」
とろり、とろり、粘り気を含んだ白濁が、膜のどこかから漏れ出していた。
「ん……、なに、こわいかお、して」
「やぶれた」
「やぶれた?」
緩慢な動きで、三ツ谷は上体を浮かす。ベッドについた肘は、その体を支えようとぷるぷる震えていた。手を貸してやらないと。背中を支えてやらないと。思いはするものの、白日に晒された失態に、身動きが取れない。
「ア、っと、つけるの、失敗しちゃ、った?」
ようやくベッドの上であひる座りをした三ツ谷が、こてんと首を傾ける。ほっそりとした人差し指は、困ったように自らの頬を掻いた。
ごめん。項垂れると同時に、自身の口からは掠れた声が零れ出た。なにが、余裕をなくした様を見せたくないだ。情けないところを見られたくないだ。とっくに、やらかしているじゃないか。俯いたせいもあり、必然的に三ツ谷の膝が視界に入る。緩い隙間を辿って行けば、シーツに触れている陰唇に辿り着く。汗と、膣液と、おそらく俺がやらかした体液とが、布地に染み出していた。
「いいよ」
「……は?」
「ドラケンだし、いいよ」
やけに軽やかな声に、首を擡げる。合わせて目を見開くと、三ツ谷ははにかみながら下腹に手を乗せた。とん、とんと二回ばかり叩いてから、思わせぶりに肌の上で円を描く。
「むしろ、もっと注いでほしいかも」
「……ジョーダン」
「残念。結構マジ。どうせやらかしちゃったんだしさ、次はナマでしようぜ」
「軽はずみなこと言ってんじゃねえ……」
「だから、本気だって。そんなチャラく聞こえる?」
「チョロく聞こえる」
「ん、っふふ、まあね。あはは、すごい良かったから流されてる節はあるかも」
呆気にとられる俺をよそに、三ツ谷は顔を綻ばせる。さらに、よろりと腰を浮かせた。にちゃりと粘着いた音がしたのは、幻聴ではない。股座からとろりと愛液を溢れさせながら、一つ、二つと、三ツ谷はこちらに近付いてきた。
おい、待て、なんで迫ってくるんだ。
「よいしょ」
ハッと疑問に気付いた頃には、その肢体は俺の上に乗り上げていた。
「ッ三ツ谷」
「これは戯言と思ってくれていいんだけど」
「あ?」
「いっぱい中出しされたらさあ、戻れそうな気がするんだよね、男に」
「……まさか」
「どうだろう。試してみようよ」
「ばか、それでダメだったら、お前」
「うん? その時はその時。つーか、言ったろ、ドラケンなら、良いって」
二本の腕が、首に回る。上体はぴったりとくっついて、三ツ谷に実ったたわわな乳房が、こちらの胸板にぶつかった。
「しよーぜ、―― もっとえっちなこと」
そう囁かれたところで、ぷちゅり、苛烈に充血した先端が、艶めかしい肉に包まれた。たかが、〇・〇一ミリ。されど、〇・〇一ミリ。襲ってきた生々しさに、鼻の奥が熱くなった。うわ、鼻血、出てないよな。拭って確かめようにも、自らの両手は柳腰を鷲掴むので埋まっている。
「ぁ、」
眼前から、悦に浸った喘ぎが降って来た。
「あっ」
腰を落とすにつれて、そいつから理性は失せ、本能優位へと変わっていく。
「あァッ!」
やがて、ぱつん、肌にぶつかる音がした。熱の全てを、三ツ谷は咥え込んでくれたらしい。切っ先は、深いところの壁にめり込んでいる。窮屈なナカが、媚びるように絡みついてきた。
腰を掴むだけじゃ、物足りない。腕の先は、背中の中央へ伸びていく。仰け反ろうとする体を、ありったけの力で抱きしめた。
「~~ッ♡」
吐息ばかりの嬌声を聞き届けながら、改めて蠱惑的な体を押し倒した。
俺なら良いって、なんだよ。俺だって、三ツ谷だったら、いい。責任だって、なんだって取ってやる。情欲に下ったそいつの唇を塞ぎつつ、艶めかしい体を、何度も何度も、数えるのも馬鹿らしくなるくらいに貪った。
散々、中にぶちまけた翌朝、三ツ谷の体は正しく男に戻っていた。その癖、色香は纏ったままだったものだから、つい、手を出してしまったのは、言うまでもない。