それも手遅れ
『ねえ隆君、もっとスゴいこと、興味ない?』
どうしてあの時、自分はウンと頷いてしまったのだろう。それくらい、彼女のことを魅力的に思っていたからかもしれない。
「っふ、ンっ、ァ」
とはいえ、過ぎた好奇心だったのは間違いない。蠱惑的に笑った彼女は、あれよあれよという間にオレの体を作り変えていった。いよいよまずいと思って、別れを切り出した頃にはもう手遅れ。
「ぁっ、ア、ここ、ンッ、んんン」
すっかり自分は、―― アナルを弄らないと達せない体に成ってしまった。
「ぁ、あ~きもちぃ、ンっ、んんふ、ア」
電池の切れてしまったバイブを、一思いに後孔に突き立てる。表面についたイボが肉壁に擦れて、めくるめく快感が背骨に走った。奥深いところにトンっとぶつかったところで、今度はゆっくり、焦らすように引き抜いていく。潤滑剤で滑る媚肉が、逃すまいと玩具に絡んだ。この、粘膜が引きずられる感じ、すごくイイ。堪らない。リアルさより、性感を高めることを目的にした張り形は、竿だけでなく先っぽにも凹凸がついている。ほとんど無意識に、そのざらつきで腹側を抉るように男根を模した玩具を動かしていた。
「んっ、ヴ、ぁッ……、アッ、あ」
間もなく、ぐにゅ、と、この体の泣き所を通り過ぎる。かつて交際していた女性に、徹底的にいじめられたトコロ。彼女と別れてからも、癖のように自分で慰め続けていたトコロ。これ以上ソコを刺激するのはまずいとわかっているが、バイブの切っ先が食い込むように角度をつけてしまう。無機質なのに、程よい柔らかさのあるイボが、みっぢりと前立腺に押し付けられた。
「~~ッ!」
がくんと腰が浮く。足が強張って、つま先がシーツを蹴った。不安定に仰け反ったまま、反り返った自身は白濁を漏らし始める。
あ、ぁ、また、だめなイキ方、しちゃった。
とびきり強い絶頂感が過ぎると、ぼたり、玩具を支えていた手が布団に落ちる。続けてぐぽりとピンク色のソレが抜けて、最後にどすんと体が沈んだ。だらしなく投げ出した脚は、思い出したかのように引き攣るし、下腹もぴくぴくと震えている。深く息を吐きながら瞼を閉じると、心地の良い倦怠感だけに浸れた。
このふわふわとした気分のまま、眠ってしまいたい。だけど、体は汗まみれだし、下肢に至ってはローションと精とカウパーでドロドロ。シャワー、浴びないと。汚れたバイブも洗わなくちゃ。
しなくてはいけないことを一通り羅列したところで、とっぷりと意識は落ちていった。
いつも、そう。まずいと思った時には、もう手遅れ。
「へえ、三ツ谷って意外とハードな趣味してんだあ」
にんまりと笑った男の手には、昨晩世話になった三代目ピンクバイブが握られていた。
カッと目を見開くが、目の前にいるそいつはにやにやと意地の悪い笑みをいっそう深くするばかり。酒が入っているのもあって、遠慮がない。まあ、オレとコイツの仲だ。素面であっても「なんだよこれ?」と煽っては来ただろうけれど。
グロテスクなクリアピンクは、ぷらぷらとドラケンの手の中で遊ばれている。指先でカチカチとボタンを押されているが、ソレが無機質な振動を響かせることはない。だって、洗うときに、電池を抜いたから。丁度替え時だったんだ、オナってる最中にブルブル弱くなっちゃうし、深いところを痛めつけたいのにただの焦らしプレイになっちゃったし。
「ッそれ、は、」
「ん~?」
言い訳しようと口を開くも、それらしい言葉は何一つ浮かんでこない。
ハードな趣味。言い返せない。なんせ、そのバイブはLサイズ。あちこちイボも付いているし、ナカのパールが透けて見える。
意外と。そう思われるのも致し方あるまい。外じゃ、猥談には乗っからないようにしていたから。元カノに前立腺開発をされてからは、特に意識していた。うっかり口を滑らせたら、とんでもない事故になる。
……おかげで、自分は性に淡泊だと思われている。実際は、夜な夜な肛虐に耽ってアンアン言ってるってのに。
はくん。開いた口は、空気を食べた。視線の先では、相変わらずドラケンはガラ悪くしゃがみ込んでいる。傍らには、煎餅布団。その上には、乳首用にと準備したものの結局使わなかったピンクローターと、おおよそ三分の一にまで減ったローションボトルが転がっていた。
「それはっ……」
「うん」
どうして、今朝の自分はそれらを片付けなかったのだろう? 簡単なことだ、朝、時間がなかったから。それ以上の理由なんて、ない。
アナルでオナニーに耽って、体がぐずぐずどろどろのまま寝落ちた。その上、今朝目覚めたのはギリギリの時間。シャワーで身を清めながら玩具を濯ぎ、汚れたシーツとバスタオルをとりあえず洗濯機に放り込む。さすがに夜まで脱水状態で放置するのは憚られたから、乾燥までやるようにセットして、家を出た。洗ったディルドは、布団の上に放り投げるのが、精一杯だったんだ。
で、家に帰らず、昔馴染みとの飲み会に顔を出し、飲み直そうかとドラケンと連れ立って帰ってきた。帰ってきて、しまった。
なんであのとき、ドラケン家が良いと言わなかったんだ!
十数分前の自分を殴りたくて仕方がない。
「そ、れは、です、ね」
「……うん?」
自らに向く苛立ちとは裏腹に、出てくる声は酷く小さく、そして掠れている。揺らして見せられるピンクから目を逸らして、必死に取り繕う言葉を探した。けれど、らしい言葉は思いつかない。天啓だって降ってきてはくれない。えっと、その、あの。場を繋ごうと、意味のない指示語ばかりを連ねてしまう。
どうしよう。言葉が詰まれば詰まるほど、顔に血が集まってくる。バレた瞬間は、背筋が凍り付いたというのに、今はもうすっかり熱かった。鏡を見なくても、赤くなっているのは明らか。ここまで取り乱したの、一体何年ぶりだろう。いっそ、ありのままを話してしまおうか。血が集まり過ぎて、血迷ったことを考えてしまう。
いや、いやいや、いくらなんでも、それは、だめ。性癖に大らかなドラケンでも、引くに決まってる。だって、可愛げのある玩具じゃない。色こそ淡いピンクをしているが、グロテスク極まりないブツなのだから。
「……三ツ谷」
「ッス」
おもむろに、名前を呼ばれた。神妙な声色だったのもあって、反射的に返事をしてしまう。俯いていた顔まで、上げてしまった。なんせ、ドラケンに呼ばれた時は、顔を見るのがいつもだから。……でも、今回ばかりは、しまったと思う。口調通りの澄まし顔をしながらも、まだその男の手にはピンクバイブが握られていた。欲の塊と言っても過言ではない物体が、ドラケンの、手の、中に。
あまりの倒錯感に、頭が揺れる。膝が折れる。ぺちゃり、畳の上に、へたり込んだ。たちまち、視線の高さが逆転する。ちょうど、ドラケンが膝立ちになったせいもあるのだろう。そいつは、ずりずりと膝で歩み寄ってくる。右手には、何度見てもピンクバイブが握られていた。
「もしかして」
逃げる余裕はない。なんなら、逃げようと思った時には、もうドラケンは眼前にやってきていた。本当に、オレはいつも、引き際を見誤る。
「ンむ」
改めて目の前で揺らして見せられたピンク色は、すぐにむちゅっと唇に押し付けられた。腹の奥、深いところを慰めてくれるざらつきが、今は口元にあるなんて。つい、舌を伸ばしそうになって、慌てて唇を引き結んだ。……そのせいか、ちゅぅと柔らかな表面に吸い付いたみたいになる。
「自分で使ってた?」
「ぅ」
「使ってたんだあ」
「うぅ」
「あの三ツ谷がねえ?」
「ぅうゥ」
むにむにと、シリコンの柔さが唇に当たる。そんな風に押し当てないでくれ。いよいよ、しゃぶりつきたくなってしまう。いつもオレのこと満たしてくれてありがとね。ふざけて偉大なるピンクバイブ様にご奉仕する癖、つけるんじゃなかった。
ドラケンの値踏みする視線もいけない。この世で最も惚れた男に、伏し目がちに見下ろされてもみろ。誰だってクラッとする。バイブを押し当ててくるのだって「しゃぶれ」と命じられているかのように思えてきた。いや、もうしゃぶれってことで、良い? 良いよな、良いことに、しよう。
「ァ」
「お」
「んむ、ぅ、」
控えめに口を開いた。すぐに、あむ、柔さのある表面を咥える。イボの形を確かめるように、舌先を押し当てた。ついでにキュと吸い付けば、いつの間にかにじみ出ていた唾液で水音が立つ。
「ん、ア……」
数回もごもごと口を動かしたところで、一思いにガパリと開いた。一生懸命に伸ばした舌の広い面を、半透明のピンクに押し当てる。舌と、時々ぶつかる唇とで、玩具の凸凹を確かめていった。パールが透けて見えるところを越えると、一旦つるんと平坦に。けれど、先の方はざらざら。ココ、ココで奥をトントンすると、すごく、イイ。でも、昨日は途中で電池が切れちゃったから、自分でトントンするしかなかった。替えの電池、あったっけ。あったような気がする。んん、今日はオナるつもりなかったけど、しちゃうおうかな。腹の奥、ムズムズしてきた、し。
「はは、やば……」
目の前にいる男の目も、なんだかギラギラしている。この目に晒されながら自慰に耽ったら、堪らなく気持ち良くなれそう。かつての恋人に開発されているときもそうだった。欲を携えた目で見下ろされながら、自分を慰めるといつもより興奮してしまう。痺れのような高揚を感じながら、歪な切っ先を口内に招いた。
『ねえ、隆君』
目を瞑ると、彼女の声が蘇る。
「……見られるだけで、満足?」
「ぁえ」
しかし、続いて鼓膜に届いたのは、想像したそれよりも、ずっと低く掠れた声だった。それでいて、よく聞かされたのと同じ台詞が畳み掛けられる。
咥えたばかりの先っぽが、むちゅりと唇から溢れた。
「もっとスゴいこと、興味ない?」
さらにかけられる言葉も、聞き覚えがある。デジャヴ、というんだっけ、こういうの。
ぽかんと咥えていた口をそのまま開けていると、ピンク色の玩具の向こうでドラケンがにんまりと目を細めた。口元にも、綺麗な三日月が浮いている。おかしい、この笑い方も、見たことがある。切れ長の目をきゅうと細めて、口の端をゆったりと吊り上げる。元カノの、笑い方の、はず。え、まさかドラケン、あの子の親戚? そんな馬鹿な。たぶん、偶然。たまたま、似通っている、だけ。
戸惑っているうちに、ドラケンはゆっくりとピンクバイブを揺らして見せた。
「ぇ、っと……」
「例えば、そう。―― 本物のコレ、とか」
バイブの、本物、とは。
考えるまでもない。開けっ放しだった唇が、ぱくん、閉じた。合わせて口の中も狭めてしまい、唾液でいっぱいにある。ウ、まずい。ごくんと飲み込むと、やけに仰々しい音と共に、喉が動いてしまった。
「こういうイボイボもパールも入ってないけど」
視線の先では、ドラケンの左手、その人差し指が、シリコンの表面をツンと突く。亀頭にしては歪な先っぽ、つるんとした平面と、銀色が透けて見える竿を経て、根元のイボへ。指先はつぅと滑っていった。そして最後に、指二本を使って、キュ、根元を掴む。
かと、思うと、ぽい、その手は玩具を畳に落とした。
「太さと長さは、オレの方があるよ」
「ぁ」
眼前に、指で作った円を差し出される。その丸は、確かに、あのバイブより、太い。その上、長い、だって?
こくん。大して溜まっていない唾を、もう一度飲み下した。
「……酔ってる?」
頭のかろうじて冷静な部分が、予防線を張ろうと声を選ぶ。
酔っぱらっていなければ、こんな戯言、吐くはずがない。酒の回った奴を相手にするのは、ただの徒労。興味ないよ、馬鹿言うなら寝ろ。そう一蹴してしまうのが、きっとベスト。
「そうかも」
「……オレも、酔ってる」
「はは、だろうな」
しかしながら、オレの頭にも、アルコールは回っていた。正常な判断は、できそうにない。いや、理性はまだ残っているんだ。突っぱねようと思えばできる。きっと、できる。
それでも、ほのめかされた「もっとスゴいコト」に、興味を惹かれてしまう。知りたいと、身をもって味わいたいと、欲が叫んだ。
「酔ってる、なら」
「うん?」
「しかたない、よね」
そう、仕方ない。真っ当な思考を働かせることは、今の自分には、自分たちにはできないのだ。だから、仕方がない。眼前に差し出された誘惑に抗うことなど、どう足掻いたところでできやしないのだ。
「もっと、スゴいこと、」
破綻した理論で自分を納得させると、勝手に口は動き出す。
こうやって、オレは彼女に尻を暴かれたんだっけ。懐かしいや。
「―― シて」
でも、さすがにこんな媚びるような甘い声は、あの彼女にも、向けたことはなかったと思う。
くったりと体を委ねると、瞬く間に畳の上に組み敷かれた。
腹の中が、熱で満たされる。紛れもない、熱だ。
そりゃあ、一人でするときにだって、熱さは感じる。気まぐれにお湯で適温に温めたディルドをぶち込むこともあるし、慣らすのを不精したせいで粘膜がヒリヒリと熱を放つことだってあった。
けれど、この熱は、これまで味わってきたどれとも違う。
「ッ、ぁっ……、ッ!」
「っは、あー、キッツ」
ホンモノって、こんなに滾るモノなんだ。
腹の中に心臓があったら、こんな風なのかもしれない。いや、不摂生を拗らせた時に、どうしてか腹が脈打ってた。あっちの方が心臓ぽかった気がする。今のコレは、自分の鼓動とは別の拍動を持っている。ドラケンの、脈拍だ。
「ァ……」
つぅと、口の端から涎が垂れた。不規則に身体が跳ねるのに合わせて、おっかなびっくり息を吸う。ただの呼吸すらままならなくて、ズビと鼻水を啜る音が響いた。
何をしなくても、気持ちがいい。熱がすぐそこにある。この胎のナカにある。たったそれだけの事実で、気が狂えそうなほどにヨかった。
「すげーなオマエ、潮まで噴けるんだ」
「ンッ、ぁ、ぃんっまた、まだでぢゃうッ!?」
「ふ、出しちゃえよ。ほら、ガンバレガンバレ」
その男の荒れた指先が、くりゅんと亀頭を撫でる。この小一時間で、何度射精したんだったか。数えるのもバカバカしくなるほどしつこく責め立てられた陰茎は、やがて無色透明な体液を吐き出すようになった。潮噴きね、まあ、ハジメテの経験じゃあないよ。元カノに散々責め立てられたときに経験済み。何年か前に、プシュッと撒き散らしている。
でも、その、一回こっきりだ。
こんな風に、繰り返し噴けるだなんて、知らなかった。……知りたくも、なかった。
「あヴ、ンッ、ン……、ぅ~~ッ」
びしゃりと爆ぜるように飛んだ潮は、数秒の間を置いてまたぷしゅりと噴き出る。アナル用のローションを纏った切っ先はとにかく滑る。ローションガーゼで延々と苛められた時といい勝負だ。体に、酷烈な快感が絶え間なく襲ってくる。もはや、反則。レッドカード。退場してもらいたいところだが、不良代表みたいな育ち方をしたコイツが素直に言うことを聞くとも思えない。
御託はさておき、悦楽を浴びせられた体は、絶頂を間近にぎくりと強張る。引き攣り続ける両足は、宙に向かってピンと伸びた。手指は拠り所を探して辺りを引っ掻く。やがて胴は仰け反り、全裸に剥かれた肌が畳の目に擦れた。
「ぅ、ヴっ……、ァ」
「ン……、くいちぎられそ」
「ん、ふふ、そした、らッ、だいじにつかぅね」
「へえ、ディルドコレクションに加えてくれんの?」
「ぅんっ、あは、毎日つかっちゃうかも」
みっちりと媚肉に食い込む肉棒は、どの玩具も霞むくらいに具合が良かった。ホンモノ、すごい。ホンモノ、ヤバい。ずぽずぽと抽挿しなくたって気持ちが良いんだ、傍にあったら毎日使うに決まってる。こんなディルドがあったら、どんなストレスも消し飛んでしまいそう。実際、今日強引に片付けた仕事への疲労はすっぽりと頭からなくなっていた。これぞ、チンポ・セラピー? 男根をご神体として祭り上げる気持ちもわかる気がする。
貫くような愉悦が落ち着くと、張り詰めていた体が緩みだした。宙に伸びていた脚はぐにゃりと曲がる。胴体の方に引き寄せつつ大きく割り開くと、結合部から妄りがましい水音が響いた。
「ど、らけん」
「んー?」
「うごいて」
「……いいけど、この締め付けじゃケツ穴捲れちまうんじゃね?」
「それでも、いぃっ、から……」
「良くはねぇだろ、良くは」
くつくつと喉で笑いながら、ドラケンがオレの腰を掴み直す。ゆっくりと腰を引く動きに合わせて、ずりずりと粘膜に熱が擦れた。あれほどローションを使っても、これだけ引っかかるなんて。ホンモノを教わらなかったら、知らないまま過ごしていたことだろう。
張り出たカリが通る度、腸壁が抉られる。排泄に似た快感は、昂った感度を再び絶頂へと導いていく。
「あっ」
ついにカリ首が淫口に辿り着いた。引き抜こうとする動きで、窄まっていたソコがミヂミヂと開いていく。これ以上引っ張ったら、冗談じゃなく捲れてしまう。……それはそれで、気持ちが良さそう。でも、腹の中が空になっていくのは切なくもある。完全に、抜かれちゃうのは嫌だな。捲れるほど虐げられたい欲と、ぽっかりと穴を空けたくない欲とがせめぎ合い、キュッとクチが窄まった。
その瞬間、頭上から濡れたため息が聞こえる。
ぼやけた焦点を定め直そうと、もたもた瞬きをした。悩ましげに眉が寄せると、滲んだ縁がクリアになっていく。冴え始めた視界に、男の、耳にかけた前髪がぱさりと垂れるのが映った。
「ぁ」
揺れる金糸の向こうにある双眸は、獰猛にギラついている。捉えた途端、身動きが取れなくなった。……嘘、繋がっているところだけは、きゅうきゅうと打ち震えている。熱塊に出ていかれた内側の柔肉も、物欲しげにうねった。たっぷりと注がれた潤滑剤が、ナカで粘着く。糸を引く。小さな泡を作っては、ぷちゅ、ぱちゅ、弾けて溶けた。
体の裏側に気を取られていると、ふ、吐息で笑う声がする。意識を引かれた先では、口角を持ち上げたドラケンが舌なめずりをしたところだった。
このままじゃ、食べられてしまう。後戻りできなくなるまで、喰らいつくされる。浮かんだ予感に、浅ましい身体は歓喜した。
ア、クる。
「~~ッ♡」
一思いに貫かれ、体が仰け反った。荒っぽいピストンで揺さぶられているのに、腹の奥からはとちゅん・ぶちゅんと妙に可愛らしい音が鳴る。最奥は、苛烈な揺さぶりすら甘く享受しているらしい。
自身のペニスは、潮吹きと漏精を繰り返していた。勢いよく体液が尿道を抜けていくのも、焦れったく管を上ってくるのも、どちらも気持ちが良い。こんな快感を浴びていたら、ちんこ壊れちゃいそう。……もう、壊れているようなもんか。あのコの手から逃げた時点で、女の膣じゃ満足できなくなっていたんだから。
ああ、エラで割り開かれるのが堪らない。前立腺をぞりぞり擦られるといくらでも馬鹿になれた。脈打つ熱で、結合部から悦が沁み入ってくる。自分はちゃんと人の形を保てているだろうか。そう思うくらいに、この身は蕩けていた。視界もめちゃめちゃ、雄を受け止める粘膜以外の感覚が朧になっている。
「ふ、ク」
だんだん、抜き差しする動きが雑になってきた。ほとんど突き刺さったままの状態で、艶めかしく奥の壁ばかり捏ねられる。どうやら派手に腰を振りたくらなくても、向こうは気持ちがよくなれるらしい。ドラケンの顔には、とろりと甘い悦が滲んでいた。もしかすると、限界が近いのかもしれない。
色気を孕んだ汗の雫が、男の顎から落ちた。ぱた、り。その一滴は、オレの胸に触れた途端、じゅわりと悦を移してくる。気持ち良い。でも、気持ち良いは、もういっぱいいっぱい。これ以上与えられたら、キャパを越えてしまう。愛欲の器から、溢れてしまう。どうにか堪えようと息を詰めると、口からはア、ア、と上ずった声がまろび出た。
「ぐ」
「ッア、」
はらわたの熱が、大きく膨れる。拠り所を探して、指先が畳の目を引っ掻いた。享楽の頂上に到達したと、全神経に電流が走る。
脈打つ動きに合わせて、最奥に熱を叩きつけられる。腹の中に、精をぶちまけられた。男の肉棒は、どくどくと脈打ちながら種を柔肉に擦りつける。生々しく伝わってくる感触に、理性は蕩けていった。骨抜きになったソレは、やがてとろとろと萎えた自身から零れていく。
「おれ……」
「あ?」
だらしなく開いた口から、ぼとりと声が落ちる。
「バイブじゃイケなくなっまいそぉ……」
重たい舌が、緩慢に動いた。穿たれたのは直腸なのに、痺れるような快感は舌先や、手指の先にまで達している。どんなに玩具を使ったって、これほどまでの絶頂感には辿り着けなかった。やっぱり、ホンモノはすごい。性具がオモチャと呼ばれるのもわかる気がする。
もう、この愉悦を知る前には戻れない。射精して幾何か柔くなった男根を、後孔はきゅうと食んだ。けれど、引き止めることはできない。媚びもむなしく、ちゅぽっとソレは抜けてしまった。浮いていた腰も、静かに畳に下ろされる。体液塗れの尻が、ぺちゃっと畳に触れた。
「安心しろよ、」
「ぁえ」
と、ドラケンの手がこちらに伸びてくる。汚れた指が、するりとオレの頬を撫でた。情事の匂いが鼻孔を掠める。色気を纏った笑みを向けられると、精液の残った胎が小さく疼いた。
もう一回、したい。
「ちゃんと責任とるから」
あ、シてもらえ、る?
「オレじゃなきゃ、―― ダメなカラダになろーな♡」
「ぁえ」
やらしく笑った顔にぞくりと背筋が粟立つ。
まずい。
―― と、思ったということは、これも手遅れ。ストップという声を発するより早く、芯を取り戻した男にぢゅぷんッと貫かれた。