当て馬の加藤君
女体化
嬌声は子守歌。
ベッドが軋む音も、肌を叩く音も、淫靡な水音も、ソレが聞こえる場所で育った自分には、ただの環境音でしかない。
だから、こそ。
『っア、……ぁんっ、アッ……』
壁を隔てた向こうから聞こえてきた喘ぎ声に、何一つ、違和感を抱かなかった。いや、抱けなかった、というのが正しいか。
バイク屋を始めて数年、自立した生活を営むのに十分な収入になったのを機に、実家たるヘルスを出た。手狭ではあるが、男一人住むには十分なアパート。作りが新しくないのもあって、扉を潜る度に屈まなくてはならないのは煩わしいが、家に風呂があるというのは魅力的だった。もう銭湯に通う必要もない。まあ、広い風呂の気分になったときは行くんだろうけれど。D&Dも徒歩圏内。おかげで、バイクはそっちにおける。
パーには、イイ部屋を紹介して貰った。隣人は性に奔放らしく、週二で女を連れ込んでいるがそれはそれ。日々痴情の縺れに巻き込まれていたヘルスと比べたら、平和としか言いようがない。しいて言えば、毎回ゴミの日の前日に連れ込んで、翌朝女にゴミ捨てをさせているのはどうかと思う。ゴミ捨てくらい自分でやれよ。テメエが出したゴミだろうが。
「やべえ、そうだ、ゴミ、明日はえーと……、燃えるゴミの日……」
まあ、おかげで、こっちもゴミの日を忘れずに済んでいるのだけれど。
手早く家の中にあるゴミを集めた。相変わらず余計なものを買わない生活をしているからか、今日もコンビニのレジ袋に収まってしまう。この間、顔を出しに来たタケミッちが唖然としてたっけ。どうやったら男の一人暮らしでこんなにキレイに暮らせるのかと。
『ぅ、ンンっ、ぁ……、……ッちゃう、イッちゃぅっ!』
小さなゴミ袋を玄関に置いて戻ってくると、隣人の情事も山を迎えるところらしい。
灯りを消して、喘ぎのする壁とは逆側に置いたベッドに入った。今日はいつもより声がする。窓でも開けているのだろうか。窓開けるより、クーラー効かせた方が涼しいし、ぶっ倒れる心配もないだろうに。それとも汗だくでまぐわいたい気分だったのか? 女も災難だな。
『らめッ、~~ッあ、アんっ』
なにより、―― 今日の女の喘ぎはわざとらしい。
隣人・カトーくんの下卑た息は普段と同じだから、演じられていることには気付ていないだろう。ほんと、災難だな、この女。とはいえ、オレにとっては、わざとらしい声の方が耳に馴染む。あー、寝る、寝そう、今日も安眠できそうだワ。
仰々しく果てる声を聞きながら、とろとろと意識は落ちていった。
無論、快眠。目覚めてしばらくぼんやりして、ああそうだゴミ、とベッドを降りた。一拍遅れて、スマホがアラームを鳴らし始める。ええと、どうやって止めるんだ。数日前に替えたばかりの電子端末には、まだ慣れそうにない。パカパカのままで良かったろうか。でも、そうやって渋っていてはいつまで経っても慣れないまま。これじゃあ、機械音痴のあの女を笑っていられない。
べたべた触っているうちに大人しくなったスマホをベッドに放った。身なりを整えたいところだが、ゴミの収集時間を思うとのんびりもしていられない。せめて髪だけでも……、いや、どうせゴミ捨てだけだ。今日は月曜、店は定休日。慌てて身支度をする必要もない。
軽く水を飲んだところで、指先で小さな袋を抓む。玄関の鍵を開けながら、クロックスを引っかけた。
「あ」
扉を開けると、道路を隔てた向こうに山になったゴミ袋が見える。カラスもネコも今日はおらず、代わりにオーバーサイズのパーカーを羽織った女が見えた。このアパートには、あの年頃の女はいない。昨日の隣人の遊び相手だろう。
「んん?」
ぱたぱたと踵を鳴らし、ゴミ捨て場に近付いていく。生足を晒している女は、怠そうに大きく膨れたゴミ袋をネットの下に押し込んでいた。
なんだか、見覚えがある。襟足の長い、淡い色の髪。手を叩きながら埃を払う後ろ姿には、どうも既視感があった。ついさっき、頭に浮かべた、機械音痴。その女の、背中に見える。しかし、オレの知るあいつは、こんな風に脚を見せた格好、滅多にしない。いつだって露出は控えめ、せいぜい足首が覗く程度。
違和感を抱えながら、女の横に立った。合わせて、そいつが顔をあげる。必然的に、目が、合った。
あ、ウン、やっぱり。
「オハヨ、三ツ谷」
「……ドラケン?」
「うん。かわいーカッコしてんね、今日」
「ありが、と……」
オレの傍らにあるゴミ袋は、コイツが持っていたソレに比べたらあまりにも小さい。ちょいとネットを持ち上げて、押し込まれたばかりの塊の上に今日のゴミを置いた。
両手が空になったところで、もう一度、隣に目を向ける。何もしなくても長い睫毛は、さらに上に伸びていた。人工的な淡い赤色が、瞼に乗っている。似た色味は、頬と唇にもじゅわりと滲んでいた。化粧、してる。そりゃするか、もう成人してんだもんな。なにもしていなくても綺麗な顔をしているが、コレはコレで悪くない。素朴さが失せるというか、垢抜けた印象になるというか。
服装のせいもあるかもしれない。パーカーの前はしめていなくて、カットソーの襟ぐりから惜しげなくデコルテが晒されていた。で、下はショートパンツの生足にミュール。女っぽい。あの三ツ谷も、こういう格好するんだな。当たり前のように、似合っている。見かけたのが、朝っぱらのゴミ捨て場でさえなければ、一から十まで褒めていたところだ。
あーあー、髪だけでもまとめるんだった。こんな見てくれで褒めたって、鼻で笑われるのが目に見える。がしがしと頭を掻きながら、つ、と視線を逸らした。
「なッ、」
同時に、下から裏返った声がする。
盗み見るように、視線だけ戻すと、三ツ谷は慌ただしくパーカーの前を合わせていた。女子然とした格好がすっぽりと隠れる。ショートパンツも、裾すら見えなくなった。……そのパーカー以外、着ていないみたいだ。ちょっと、えろい。堂々としてりゃいいのに、恥じらわれると「ああ、恥ずかしい恰好なのか」と認識を塗り替えられてしまう。んん、ちょっとどころじゃなくえろく見えてきた。つい、目を、細めてしまう。
「なんでこんなトコいんの!?」
「だってソコ、オレん家だし」
「え」
「一〇三号な」
「三ッ!?」
一応、纏めようかと髪を掻き上げてみるが、三ツ谷がオレの風貌に何かを言う様子はない。こいつとは長い付き合いだ、思うところがあるならすぐに言うはず。今更取り繕う必要もない、ということか。ぱ、と手を離すと、伸びて重たくなった髪が束になりながら垂れていった。邪魔な分だけ耳にかけると、「となり、」と呟く声が耳に届く。
「……昨日、さ、その、」
「うん」
「なんか、きこえた……?」
「……バッチリ」
「ア゛」
嘘で誤魔化そうか、とも思ったが、聞いてしまったのは事実。上手な喘ぎ声がよく聞こえました。おかげで、安眠できました。……そこまで言うのはやめておくか、皮肉にしか聞こえない。本当によく眠れたんだけどな。自分は、静かな方が眠りが浅くなる。バイクが通る音とか、救急車のサイレンとか。そういうのが気になって、夜中に起きるのも珍しくない。のに、昨日はよく眠れた。上手に作られた嬌声のおかげで。三ツ谷にだったら、この性分を伝えても良いだろうか。いや、バカ野郎と引っかけてるショルダーバッグで叩かれそうだ。やめとこ。
静かに形のいい頭を見下ろすと、淡い髪の間から耳が覗く。その耳介は、白いとは言い難い。じんわりとした赤みを帯びていた。
「わすれて」
「ハ?」
「お願い、忘れて、後悔がヤバいから!」
聞こえてくる声は、徐々にスピードを上げていく。乱闘に巻き込まれたときにちょっと似てる。悠長に喋っている時間がない分、捲し立てるような口調になるのだ。三ツ谷のこういう喋り方、久々に聞いた。
ぱち、と目を瞬いているうちに、俯き気味だった顔が勢いよく持ち上がる。気怠さを持っていたタレ目は、しっかりと、見開かれていた。あれ、なんか潤んでる? それに、化粧による赤みとは異なる赤が広がっている。ガチで喘がされたあとの嬢みたい。んん、あそこまでとろんとしてはいない、か?
「後悔って、そんな、え? もしかしてカトーくん下手くそだったん、しょっちゅう女連れ込んでんのに」
「顔馴染みにあんなヤリチンと寝たって知れたのがッ、~~ぅああぁあもう! なんでドラケンはそんな平然としてられんの、見知った女の性生活とか知りたくなくない!?」
「オマエが遊んでんのなんて今更な話だろ。いくら愚痴聞かされたと思ってんだ」
「ぐ」
弾丸のように飛んできた声が詰まる。
オレは三ツ谷が遊んでるのを知っているし、三ツ谷もオレに知られていることを知っている。最初こそ恥じらっていたような気もするが、いつの間にか「ビッチでなにが悪い」と開き直るようになっていた。先週寝た奴があまりにもお粗末だったとか、体型は好みだったのに相性が悪かったとか、愚痴を聞かせられるのはしょっちゅう。オレの育ちをよくわかってるからこそ言うのだろう。三ツ谷の自棄酒に付き合うのだって少なくない。
持ち上がっていた顔が、また徐々に下がっていく。かくんと俯ききると、旋毛がよく見えた。ついでに、項もよく見える。一つもキスマークのないソコに、ちょっと感心してしまった。その線引きはしてるんだ、オマエ。
「わたしはやりまんびっちです……」
「なんの告白?」
言ったほうが楽になれるかと思って。
か細く言い返した三ツ谷は、正直楽になったようには見えない。どうしたものか。丁寧にあやしてやるか、いっそからかってしまうか。適切なのはどっちだと、脳内の脳内のものさしで慎重に見定める。これが店の嬢だったら、「知るか」と一蹴して終わらせがちだが、相手は三ツ谷。雑に扱いたくはない。……どうもこいつには入れ込んでしまう。付き合いが長いせいだろうか。かの兄妹のように取りこぼしたくなくて、贔屓しているのかもしれない。
もう一度、雑に髪を掻き上げた。立ち話もなんだ、とりあえず部屋に引き上げよう。大ぶりなパーカーに覆われた柳腰を、やんわりと抱き寄せた。
「……じゃあ、性経験豊富な三ツ谷さん」
「ヴ、グ……、ウッス」
「続きは朝飯食いながらでいい?」
「……え、と?」
「こんな猥談、ゴミ捨て場でするもんじゃねえだろ。とりあえずウチ来れば」
こっちは目覚めて十数分だが、世間様はちょうど通勤・通学の時間帯。こうやって駄弁っている間にも、チャリや原チャが通り抜けていく。それも、オレたちに胡乱な目を向けながら。もしかすると、ゴミを捨てたいけれどオレらがいるせいで尻込みしている住民もいるかもしれない。ここでの生活、気に入ってんだよ。隣から週二で喘ぎ声が聞こえてくるの加味しても、満足している。無用なトラブルは、起こしたくない。
行こ。指先をそれとなく自分の部屋に向けると、なぜか三ツ谷ははくんと息を飲んだ。それから、うらうらと視線を泳がせ始める。流石に、ヤッた直後に声かけたのはまずかったか? でも、それこそ今更だよなあ。あの男、最悪だった! と夜中に呼び出されたこともある。ヤッたその足で呼ぶなよ、オレを。まあ、店の連中の愚痴聞くよりよっぽど面白いから、出向いてしまうのだが。
「三ツ谷?」
「あ、のさ……」
「うん」
嫌なら嫌でいい。そう言ってくれれば。
腰を折りながら綺麗に整えられた顔を覗き込むと、ツンと唇が尖った。小さい。でも、抓んだら柔らかそう。触れたい衝動を堪えながら、上向きの睫毛にピントを合わせた。相変わらず、瞳のガラスは潤んでいる。ぽっと羞恥を孕んでもいた。……違うな、この熱っぽい目は、恥ずかしいなんて感情じゃない。惚れっぽいキャストに、ちょくちょく向けられる、目。
女が、欲情してる、目付きだ。
「いま、ムラムラしてるから、部屋なんかいったら、ドラケンのこと襲っちゃうよ」
細い指先が、パーカーの合わせから離れる。流暢に伸びてきたそれは、きゅ、着ているタンクトップに引っかかった。晒されている生足が、スエット越しに触れる。片腕で軽く三ツ谷の腰に触れただけだというのに、抱きしめているかの錯覚に襲われた。
「……マジで言ってる?」
「…………ちょっと、ビビってる」
「ビビってるって顔じゃねえって」
「だって、ムラムラしてるって言ったじゃん」
声を潜めれば、つられて三ツ谷のトーンも小さくなる。顔を寄せ合って、体も寄せ合って、内緒話をしているみたい。あ、やべ、チャリ通の高校生がギョッとした顔して走り抜けてった。落ち着けと引っぺがそうか、流されて連れ込もうか。……迷う素振りこそしてみせるが、その実、どうしたいかは決まっている。万が一、冗談と言われても逃げられないよう、腰を抱く手に力を込めた。
「今回も、相性良くなかったみたい。あっちだけ先にイッちゃってさ、こっちは不完全燃焼」
「つったって、昨日の今日だろ、体辛くねえ?」
「平気。って、知ってるでしょ」
「……まァ」
「それに、前から、興味あったんだよね」
「興味?」
「うん。―― ドラケンが、どんなセックスするのか」
どお、今日定休日でしょ。囁く声にも色が孕みだす。こっちがその気だって、もうバレている。
一つため息を吐いて、屈めていた体を伸ばした。腰を捕らえた手はそのまま、つま先がアパートを向く。たちまち、隣から上機嫌が漂った。ぱたぱたクロックスが鳴るのに合わせて、コツコツとヒールが響く。
「ヤッたあと「気まずい」って言って避けんなよ」
「そっちだって、いきなり他人行儀になるとかナシね。ドラケンみたいな寛容なオトコ、手放したくない」
「そりゃどーも」
道路を渡って、淡々と一〇二号室を通り過ぎる。三ツ谷がその扉に興味を向ける気配はなかった。忘れ物もないのだろう。……じゃあ、この小さいショルダーバッグに化粧道具一式入ってんの? 三ツ谷の収納センスが良いのか、鞄のキャパが優秀なのか。どうせ化粧直しが必要になるコトをするんだ、その時どちらが正しいか確かめよう。
「じゃあ」
「ぁ」
「ドウゾ」
玄関扉を開けると、生白い喉がこくんと上下した。……オイ、ちょっとどころじゃなく、ビビってんじゃん。無理することないのに。かといって、ここで日和る性分じゃない。し、オレだって据え膳食わずに過ごせる質でもない。
誘うように抱いた腰を撫でると、ミュールをつっかけた生足が前に出た。続けて、熱を孕んだ肢体も敷居を越える。我が身も滑り込ませて扉を閉めると、ほとんど同時に腕が絡んできた。
「もう?」
「だめ?」
「朝飯食いたい」
「んん……、えっちが先がいいな。お腹いっぱいなったら、ドラケン、シてくれなさそう」
「そんなことないって、たぶん」
「たぶんじゃだめ。先にシよ。途中お腹鳴っても笑わないから」
ね。そう言いながら、三ツ谷は柔いカラダをオレの方に寄せる。薄手のカットソー越しに、ふっくらとした肉が押し付けられた。思ったより、ある。でも、谷間は作れなさそう。挟むのも、たぶん無理。コレ言ったら、殴られんだろうな。
ぐるぐる思考を巡らせながら、どこか蠱惑的な体を抱え上げた。素足に引っかかっていたミュールが落ちる。悪いけど、揃えてはやれない。だって、こいつの我儘を満たしてやるのが先だから。
ベッドに座らせると同時に、三ツ谷は羽織っていたパーカーから腕を抜いた。着ている薄手のカットソーの袖は、ほとんどないようなモン。あっさりと曝け出された二の腕は、脚同様に白く柔らかそうだった。内側の皮膚は、さぞ薄かろう。ちょっと口付けただけで、痕がつくに違いない。自分もベッドに乗り上げながら、肢体を押し倒した。
「ちょっと、脱がせてくれないの?」
「んん~? 少しずつ引ん剥きたい」
「なにそれ、すけべ」
「そういうことすんだから、すけべにもなるだろ」
「ン」
ちらりと覗いた薄い腹に、そっと手の平を潜らせる。想像以上にショートパンツは浅履きで、脱がさずとも下腹を撫でれてしまった。その右手でカットソーの裾を捲ると、腰骨にかかっている紐が見えてくる。左右でリボンの形が違うから、飾りではなく本当に結んでいるのだろう。へえ。
「あ、どんなパンツ履いてんだよって思ったでしょ」
「まあ。紐?」
「うん。Tバックで、クロッチもすっごい小さいの」
「色々ハミ出るだろ、ソレ」
「そーね。おかげで結構盛り上がるよ」
三ツ谷の細い指が、そのボタンにかかる。派手な見目の割に綺麗に切り揃えられた爪先が、チャックの金具を抓んだ。もったいぶってか、ジ、ジジ、やけにゆっくりと寛げられていく。……紐の先は、まだ見えない。ついでに下生えも見えなかった。いよいよ割れ目が見えるんじゃないか。そう思ったところで、ようやく黒い布地が現れる。腰をくねらせるようにしてショートパンツが下がると、クロッチと言うのも憚られるほどの布地が土手に引っかかっていた。それも、レースで、見事に透ける。これじゃあ、下着としての役割は果たしていないだろう。つい眉間に皺が寄った。
「あんまり好みじゃない?」
「腹冷えそうだなと思って」
「すぐに熱いの捻じ込んでもらえるから、プラマイゼロだよ」
「そうやって前戯蔑ろにするから、いつも気持ちよくなれねーんじゃねーの?」
「……だって、即ハメで雑にされた方が、興奮するんだもん」
「ドMかよ」
「それでいいから、ね、ハメてよ。ドMまんこ、いっぱい苛めて」
軽快に言ってのけながら、三ツ谷は脚をパタパタと揺らしてショートパンツを脱ぎ捨てる。あっけなく床に落とされた布地を目で追っていると、ギシリ、スプリングが軋む音が聞こえた。顔の向きはそのまま、視線だけを三ツ谷に戻す。
「ちゃんとシャワー浴びて洗ったから、ナカも綺麗だよ」
その先では、三ツ谷が脚を大きくM字に割り開いていた。両膝に手を引っかけて曝け出しているのもあって、ちょっと腰が浮いている。尻たぶも開いて、割れ目どころかアナルまでよく見えた。
「ほら、まだ、濡れてる、し……」
声色には悦が混じり始める。膝を抱える格好はそのままに、片手の指を肉ひだに伸ばした。中指が、レースにひっかかる。くん、指先を曲げるようにして、細やかな布地が退けられた。その女の言う通り、陰唇はぬらぬらと淫靡な艶を纏っている。続いてスジに伸びた人差し指は、色の沈んだビラビラの片方を割り開いて見せた。途端、にちゃりと水音が立つ。浅黒い外側に反して淡いピンク色をしたナカは、ひっきりなしに愛液を滲ませていた。
ビッチ、っぽい。まあ、ビッチなんだけど。昨晩だって、隣の加藤君を咥え込んでいた。その加藤君は盛り上がっていたから、締まりは悪くないのだろう。
「……あー」
捻じ込んだら、きっと、ちゃんと気持ちがいい。
わかってはいるものの、あまりの恥じらいのなさに、頭の一部分が冷めてしまう。あの店で育った弊害だよなあ、大っぴらにされればされるほど、自分の劣情は凪いでしまうのだ。だからこそ、今日に至るまで三ツ谷のことを抱かずにいられたんだと思う。
勃つかな。どう? ……ああ、まだしばらく時間が欲しいのね。オッケー、じゃあなんか、良い感じに時間稼ぎするワ。
自身のコトをさらっと確認してから、ようやく利き手を三ツ谷の秘部に伸ばした。
「んっ」
「びしょびしょ、あのまま帰ってたらショーパンもぐずぐずになったんじゃね?」
「そ、した、らっ、……ヤれそうな人、引っかけるし」
「朝から?」
「朝から。てか、ドラケンだって朝なのに引っかかってんじゃん」
「……珍しかったんだよ。オレらの前じゃ、あんまり女っぽい恰好しないだろ、オマエ」
「ん、ふふ、うんッ、……シない、ね。その方が、そっちだって気楽、で、しょ、ァ」
沈ませた指は、すぐに愛液でしとどに濡れる。隙なく処理された恥部は滑らか。引っかかることなく爪先を動かせた。上から下へと何度かあやして、ひとまず指二本を膣口に埋める。抵抗はなく、三ツ谷の顔に苦しさが浮かぶこともない。それどころか、恍惚とため息を吐かれてしまった。
随分と、期待されてんのね、オレ。そう思うと、多少は血も巡ってくる。……それでもまだ、寛げるほどの苦しさには至らない。
「ねーぇ、もう焦らさないでよ」
「焦らしてなんか」
「あン……、だめ、がまんできない、おなにーしていい?」
「は」
「ん、ぅ」
舌足らずに言ったかと思うと、その女の指がこっちの右手に重なる。添えられたのは、真ん中の指三本。にゅぷンッとナカに入り込んだそれらは、オレの指を絡めながら自らの媚肉を弄び始めた。最初こそピストンを思わせる抽挿をしていたが、すぐに指を埋めたままナカの一点を擦りだす。恥骨の裏側、つられるようにして指を這わせると、他の媚肉よりざらついている。ああ、ココ、Gスポットなわけね。
束になった指が動く度、柳腰が妄りに揺れる。へこへこと上下するのは、盛ったオレらとそう変わらない。口からは艶を纏った嬌声が小刻みに漏れていた。いつの間にか、皮に隠れていた陰核も頭を見せている。恥垢一つない真っ赤な粒は、溢れた淫水でぬらりと艶めいた。とろとろの蜜豆が、やけに美味そうに見えてくる。朝飯、まだだもんな。腹が鳴っても笑わない、と言っていたが、冗談じゃなく鳴ってしまいそう。これだけ痴態を見せつけられても、性欲より食欲が勝るのは、流石にマズいかなあ。
こくん、無意識のうちに唾を飲み込んだ。小さくも、確かに存在を主張する陰核に、引き寄せられる。
がぱ。気付くと大口を開けていた。
「へ」
「あ」
「ッうそ、だめ、ちょっ……、ドラケンッ!?」
顔の下で、彼女の指がずぽりと抜ける。滑った指先が、額に触れた。押し退けようと思ったのだろう、ぐ、突っぱねるように圧をかけられる。
しかし、阻めるだけの力は、なかった。
「んム」
「~~ッあ、」
口内に、欲しかった粒が入った。べろりと舌を這わせると、なんとなく甘い。甘じょっぱい。ヂュ、吸い付くとすぐそばにある肉ひだがぴくぴくと震えた。貝ヒモっぽかったな、というのは、言ったが最後ぶん殴られる。とろとろと引っ切り無しに溢れてくる愛液を啜りながら、ぬるりと唇を移動させた。
「ば、っか、ぉい、舐める、なよッ」
「んん?」
「きたないッ、から!」
柔い皮を、唇で挟む。ついでに淫口周りの粘膜を舐れば、三ツ谷の口からは堪らないと言わんばかりの甘い声が飛んだ。
「さっひ、」
「ぃ、んっ……、そこ、でっ、喋ンなぁッ」
「シャワー浴びらっれ」
「あっ、アぅ、こえ、びりびり、す、ゅ……」
「きれーにひたっれ言ってらろ」
「ンきゅ、ゥ」
どうも、会話が成り立たない。オレの声は届いているのだろうか。いないように思えてならない。額を退けようとしていたはずの手は、気付くとオレの頭を抱えるように添えられていた。イヤイヤと首を振ってはいるものの、上を向いた淫口はもっとと言わんばかりにキスをせがんでくる。
どれ。人より長いらしい舌を、ぬとり、割れ目に押し付けた。
「っあ、ァんっ、んんんっ」
指先で肉びらを割り開きつつ、届く限りの粘膜を舐っていく。たちまち、三ツ谷の下肢が小刻みに震え始めた。内腿なんて、引き攣ってしまいそう。可哀想に。他人事のように思いながら、尖らせた舌先を上へと昇らせていく。
そして、ニヂ、り。クリの根元に辿り着いた。
「ぁ……?」
「ん」
「ッだめ、そこはほんとにだめっ、だからッ、ぅ」
そう言うくせに、三ツ谷はオレの頭を突っぱねない。嫌よ嫌よも好きのうち、を過信するなと幾度となく言い聞かされてきたが、こればかりは信じても良いのでは。
ついに剥き出しになるまで腫れた突起を、ぐぢゅ、り、食んだ。
「ぁああ、ッ、ア、ぁっ、あ゛ッ……」
唇で挟みながら、切っ先を舌でちろちろ擽ると、三ツ谷の膝から下が空を蹴る。溢れ出る愛液は粘着きを孕みだし、口内に微かな苦味が広がった。それでもなお、丁寧に舌で愛撫を続ければ、薄い腹がビクンと跳ねる。上ずっていた声も、濁った響きになった。
「ッ、っ! ……ッンぅ、っは、ァ」
突起を咥えたまま目線だけを浮かせると、三ツ谷が仰け反りながら感じ入っているのが見えた。汗を吸って貼り付いたカットソーは、そこはかとなく素肌の色を透かしている。ツンと尖った二点は乳首なんだろう。コイツ、ノーブラかよ。痴女め。
ぢゅっと水音を立てながら顔を話すと、呼応するように体は震える。何度か腰を跳ねさせたあと、ようやく浮いていた体がベッドに沈んだ。それでもまだ、不規則に下腹や内腿が引き攣っている。半開きになった口からは、虚ろな声が漏れているし、瞳は随分と遠くを見ているようだった。
「……意外」
「ぁん、ァ、っは、ぅ……?」
「クンニ、されたことない?」
「……なぃ」
「へえ、今度強請ってみれば? 綺麗にしてるし、感度も上がるし、こんな下着で誘うより盛り上がるんじゃね?」
「ばか、言わなぃで、よ……、ぁ、ンッ」
喋っているうちに、三ツ谷は余韻で達したらしい。甘い声が鼻から抜けていく。
正直、ここまで感じやすいとは思わなかった。この三ツ谷に下手くそと切り捨てられるなんて、相当だろ。実は加藤君、見掛け倒し? そういえば、同じ女連れ込んでるの、見たことねえな。見かける女は、いつも違う顔。なるほど、読めてきた。隣の部屋の方を見てみるが、視界に入るのは無機質な壁だけ。まだ暢気に寝ているんだろう。起きていたら、たぶん壁を叩くくらいされている。
そろり、視線を三ツ谷に戻すと、ちょうどピクンと体を震わせたところだった。
なぁに、またイッたのオマエ。ほんと感度良いね。ぱっかりと脚を開いて自慰して見せつけられるより、よっぽどクる。
「……」
見下ろしたまま、鼻から息を吐き出した。三ツ谷の頭がもっと冴えていたら、鼻息荒いよと笑われていたかもしれない。まあ、これだけ淫蕩に浸ってたら、バレることはないだろう。
ぼんやりとした女体を眺めながら、スエットの上を脱ぎ捨てた。下も前を寛げつつ、ヘッドボードに手を伸ばす。長方形の箱を掴んで、軽く揺すると、カラカラとパウチの擦れる音がした。記憶の通りなら、三つは残っているはず。あ、四枚だった。ひとまず一包を取り出して、滾った自身に纏わせていく。……あー、良かった、ちゃんと勃って。
「……ぁ」
「どした」
「つける、ンだ」
「そりゃつけるだろ」
くるくると膜を下ろしているうちに、よろりと三ツ谷が肘をつく。腕を引いて起こしてやると、気怠そうに張り付いたカットソーを脱ぎ捨てた。ふるん、と現れた胸は、小ぶりながら綺麗なお椀型をしている。上気した肌には、鬱血痕も歯型もついていなかった。代わりに、乳首の辺りが変に赤く腫れている。執拗に吸われたんだろうな、手に取るようにわかった。
「―― ナマでも、いいよ」
隣人の性癖に向きかけた意識が、ぐんっと引き寄せられる。は? その形に口を開けると、三ツ谷の両手がオレの肩を押した。あ、と思う頃には体が倒れ、欲を匂い立たせるそいつが跨ってくる。ちょうど、反り返った怒張の上。ほっそりとした腕が陰茎に伸び、液溜まりの部分をちょんと抓まれた。
「コレ、つけなくてもいいよ。ピル、飲んでるし」
「……そ、のための、ピルじゃねえだろ」
「そうかな? ほら、どうせなら気持ち良くシたいじゃん」
「あのなあ……。ちゃんと大事にしろよ、自分のカラダだろ」
「してる。よくわかってる。このカラダには、ナマがいちばんイイの」
蜜壺に埋まりそうな位置で、その指先はラテックスを引っ張って見せる。爪は立てていないだろう。それでも、破れるんじゃないかと気が気じゃない。よりにもよって、持ち合わせたのは〇・〇一ミリの極薄のゴム。それなりに伸縮性はあると言えども、破れないとは言い切れない。
一つ舌打ちしてから、ぐっと上体を起こした。距離が狭まるが、三ツ谷が怯む様子はない。依然として、ゴムの先っぽを弄んでいた。ああくそ、破れてねえだろうな。悪態を飲み込んで、イタズラする手を握り込んだ。
「とにかく、だめなもんはだめ」
「えー、穴あけちゃおっかな」
「そしたら今日は終わり、シない」
「こんなに大きくなっちゃったら、一人で抜くの虚しくない?」
「オマエに無体するよりよっぽどマシ」
「……クンニはしたくせに」
「あ? あれは無体に入んねえよ、気持ち良かったろ?」
「良かったけど!」
三ツ谷の手指が離れたところで、それとなく表面を確かめる。破れてはいない、か? 念のため付け替えようか。
ぐるりと思考を巡らせていると、三ツ谷の不貞腐れた顔が飛び込んできた。ツンと、乳首さながら唇を尖らせている。なんだよ、全部抓んで欲しいって? 抵抗ないんなら、キスくらいするけど、この乳首捻ったら痛そうだな。つられるように、こっちの唇までむっと尖ってしまう。
「……ナマ、だめ?」
「だめ」
「どうしても?」
「可愛い顔してもだめなもんはだーめ」
「味気ない、絶対ナマの方が気持ち良いって!」
「ゴム一枚被った程度でそう変わるかよ。つけ直すから一旦退け」
「うぅぅ、わからずや!」
「あ、おいッ!?」
言い合っていると、おもむろに三ツ谷が腰を落とす。位置が、悪かった。すぐにぷちゅぅうと切っ先が媚肉に沈む。咄嗟に腰を掴んだものの、間に合わない。反り返った熱杭は、瞬く間に胎の中へと埋まっていく。
一つ呻く頃には、先っぽから根元まで、すっかり膣に収まっていた。うねうねと絡みついてくる肉が、理性を煽ってくる。亀頭に至っては、ちゅうちゅうとしゃぶられているかのようだった。
「ッ一気に、全部入れる奴がッ、あるかよ!」
「だ、ってぇ……、ほし、かったンっ、ァ、だ、もん」
「……ちゃんと言えばくれてやるって」
「ナマはだめっていったくせに」
「それはだめだろ」
「ぁ、んん、もっ、ばかァ……、ンッ、ぁ、おなか、くるしぃ」
「そらそうだろーよ、あー、クソ、きもちーな」
「ンふ、ナマはもぉっときもちぃよ?」
「しないっつってんだろ!」
「ぁンッ」
しつこいと下から突き上げると、すぐに三ツ谷は喉を剥き出しにして嬌声をあげた。汗ばんだそこに、かぶりつきたくて仕方がない。どこもかしこも柔らかいカラダしやがって。贅肉だけだったら、こうはいかない。適度な筋肉がついている上に脂肪が乗っているから、極上なんだろう。
はっと息を吐くと、舌の周りにまた唾液が溜まっているのに気付かされる。ごくんと飲み込んだそばから、やけに旨そうな胸がたゆんと揺れた。いよいよ腹も鳴ってしまいそう。だめだ、ここまで近いと、本当に噛んでしまう。痕を付けたら、しばらく恨み言を言われそうだ。次の男を引っかけられない、と。
ギリッと奥歯を噛みしめて、改めて乱れる肢体を押し倒した。
「っいい、ぁ、あンッ、ア……!」
片脚を担ぎ上げて、ばつんと奥を穿つ。腰を退けば媚肉は「いかないで」とキツく絡んでくるし、奥まで捻じ込めば待っていたと言わんばかりに吸い付いてくる。
あまり激しく揺さぶっては、この薄い腹を突き破ってしまいそう。手加減、しろ。そう脳みそが指示を出しても、蠱惑的な柔襞を前にするとがつがつと腰を振りたくってしまう。格好、つかねえな。……今日は寝起きのみっともないところから見られているんだ、今更つける格好などない、か?
根元まで押し込んだ状態で最奥を捏ねると、いっそう三ツ谷は濡れた喘ぎを撒く。何度も達しているのだろう、担いだ脚は時折ピンッと伸びて打ち震えていた。結合部を見下ろすと、陰茎に白く泡立った愛液が纏わりついている。処理されてつるりとした土手は、淫靡さを余すことなく曝け出していた。オレに剥かれて、ぷっくりと勃ったクリトリスもよく見える。奥を捏ねながら、この花芯を擦ってやったら、さぞ悦ぶのでは。腰を捉えている手の片方、その指先が、不埒に伸びた。
「ぁ、んぅ」
「あ?」
しかし、オレの指が届くより早く、肉芽がくちりと潰される。
「んぅ、ァ、あっ、ア、ア~」
三ツ谷の、指先が、熟れた突起に触れていた。細い指先は、割れ目の上部を無遠慮に捏ねていく。先っぽを擦ったり、裏側を引っ掻いたり、悦楽を求めて自慰を始めた。当然ながら恥じらいはない。が、こちらを煽るような思惑もなかった。まるで盛った獣のよう。
「は、はは」
気付くと、口から笑いが零れていた。
昨日壁越しに聞いた、わざとらしさはどこにもない。顔は汗と涙と涎に塗れてぐちゃぐちゃ。折角綺麗に施された化粧も、ヨレてしまっていた。格好がつかない。オレは最初からそうだったけど、コイツの取り繕った皮も剥いでしまった。三ツ谷の裸体を知っている男は多いだろうが、本性剥き出しに乱れ狂っているところまで知っている奴はどれだけいるだろう。日頃の愚痴を思うと、ここ二、三年じゃあ、オレだけだ。そう思うと―― 気分が良い。
最奥まで埋まっている熱を、勢いよく引き抜いた。
「アッ……!?」
一瞬、蜜壺がぐぱりと開く。けれど、束の間。すぐに閉じて見せた淫孔は、ぴゅっと透明な体液を撒いた。
「~~ッぁあアッ!」
即座に三ツ谷の腰が浮く。がく、がくん、支えを失った腰が妄りがましく震えた。その痙攣に合わせて、指の間、クリトリスの下辺りからビュービューと潮を噴き始める。
何が起きているのか、三ツ谷自身わかっていないのだろう。目をこれでもかと見開いて白黒させている。ちょっとトんでは、勝手に自慰する手で意識を引き寄せられるというのを繰り返していると見た。噴き出た潮は、自身の身体だけでなく、こっちの体やベッドシーツをも濡らしていく。
「ぁへ、あ゛ッ、アッ」
そのうちに腕も震えてきて、突起から指が離れる。最後に引っ掻いてしまったのだろう、一際大きく、透明な液体が噴き出された。皮に隠れて小さかったはずの陰核は、この数十分で随分と酷く腫れあがっている。これを引っ掻いたんじゃ、さぞかし苦かったろう。さぞかし、善かったことだろう。……その証拠と言わんばかりに、潮は今なお、ぴゅ、ぴゅっと噴き出ていた。
「っらに、ァ、止まンなッ、あっ、アッ!」
「もう止めなくて良くね、気持ちいんだろ」
「やっ、やだぁっ、もおっちゅっ、つらィッあ、イクの、どまんなぃッ」
「じゃあ~、……出し切っちゃわないとな」
「ぇ、ア」
潮で濡れた割れ目に、ずるりと陰茎を擦りつける。女芯のすぐ下を小突いてやれば、たちまち三ツ谷は仰け反った。亀頭が邪魔になって、潮が四方に飛び散る。素股でもしている風に膣口からソコまでを何度も行き来していると、妄りな悲鳴はいっそう大きくなった。
「ンッア、ァっ、らめっ、浅いとこくりくりするのっ、ら、めなっのッ、アッ、あァッ」
「んんー、じゃあ深い方がいい?」
「ぁえ」
にゅるんと先っぽを濡れそぼった孔にあてがう。切っ先を沈めれば、手を離しても残りの熱は埋められた。散々潮を噴いたからか、ナカはとろとろと柔らかい。それでも、緩いということはなく、しっかりと肉棒に噛みついてきた。
「ぁ、ちんぽ、きた、ァ」
「まだトぶなよ、オレぁイッてねえんだから」
「ンッ、ンンぅ、ァ、アッ」
狭苦しくなった媚肉をかき分けていくと、とちゅんっと奥にぶつかる。それでも、ぐ、ぐ、と押し伸ばして、強引に根元まで嵌めこんだ。その、捻じ込まれる感触が善かったらしい。三ツ谷の口から、だらしのない嘆息が漏れる。ベロは飛び出していて、目も熱に呑まれつつあった。まだトぶなって、言ったばかりだというのに。
すっかり覆いかぶさるようにして律動を始めると、アヘりながらも三ツ谷は腕を伸ばしてきた。肩を過ぎて、首の後ろで交差する。押し潰す寸前まで近付けば、額がぶつかった。鼻先も擦れてしまう。
どうにかピントを合わせた瞳には、キスして、と書いてあった。
なら、遠慮、なく。
「ん」
「ンぅ、ンッ」
「む」
かぶりと噛みついて舌を絡めれば、喘ぎが鼻を抜けていく。そうしながら、とちゅとちゅと奥を捏ねると、腕どころか、脚まで絡みついてきた。
この姿勢で、ナカに全部注いでしまえたら、どれほど満たされることだろう。
「~~ッ♡」
ぎゅう、と抱き込むと同時に、組み敷いた身体がビクンと震えた。ナカもぎゅうと狭まって、射精を促してくる。我慢、するタイミングじゃあ、ないよな。欲のまま、薄い膜の中に精を吐き出した。
「……っふ、ン」
「ッンぅ、ねえ、」
「んん?」
高揚が落ち着いたところで唇を離すと、とろりと銀糸が伝う。間もなくぷつんと切れた唾液は、三ツ谷の赤い唇を汚した。あーあー、ついに口紅までヨレてしまった。……ということは、こっちの口に紅が移っているということか? 確かめようにも、鏡を見ないとわからない。
「やっぱり、―― ナマでシよ」
「……オマエなあ」
べちんと尻を叩いてから、既に兆し始めている自身を引き抜いた。
それからゴムを使い果たしたところで、ようやく隣人は起きたらしい。ドンッと叩かれた壁の男に、二人でゲラゲラと笑った。